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【アートレビュー】「綠煙晴 ーGreen smoke is clearー」

TEZUKAYAMA GALLERY で開催されているグループ展「綠煙晴 ーGreen smoke is clearー」を鑑賞してきました。

木藤純子、作元朋子、御村紗也、ユ・ソラの4名のアーティストによるグループ展で、個人的に応援している御村紗也さんが出展されているので楽しみにしていた展示でした。

御村紗也さんの作品

同じサイズの同じ配色の作品が5枚並んで展示されており、背景のペインティングや表面のシルクスクリーンが同じ色味ながらも、それぞれが異なる表情を見せています。

5枚並べて展示することで、それぞれの作品同士の繋がりが生まれ、一つの物語を構成しているように見え、自分の中であれこれ物語を作って遊んでしまいました。

美しい色味と艶感、軽やかなシルクスクリーンの線がとても心地よく、ゆったりとした気持ちで鑑賞することができました。御村さんらしい素晴らしい作品でした。

御村紗也 | Saya Mimura

1997年、三重県生まれ。 2022年、京都芸術大学大学院を修了。日に照らされてできた影、風に揺れる木々の音、肌で感じる温度、空気の香りといった日常に溢れる些細な情景や現象をドローイングや写真に保存し、更にシルクスクリーンやペインティングに置き換えて描き出すことで「刹那的な時間」を画面に留める。白昼夢のような浮遊感ある作風と、洗練された描線、柔らかな色彩が魅力的な作品だ。

TEZUKAYAMA GALLERY HPより引用

木藤純子さんの作品

1枚目の画像の作品は、本物の桜の花びらと紙吹雪が入った手紙が、実際に1年のどこかで作家さんから購入者に郵便にて贈られるという作品。手紙で贈られるというプロセスを介すことで、購入者は作品の参加者の1人となり、この春の思い出も作品の一部となる。

 

2枚目・3枚目の作品は、ペインティングされた紙の上にシルクスクリーンで蓄光塗料を重ねた作品。明るい場所で見るとぼんやりとしか像をとらえられないが、暗室に持っていくと、作家の拠点である富山の風景が浮かび上がります。会場では、山の景色と海の景色の作品が展示されていますが、特に海の景色の作品が特に心に響く不思議な感覚があリました(個人的には杉本博司さんの海景を見た時と同じ感覚)。

 

4枚目・5枚目の作品は、台座にモニターが仕込んであり、コップを上から覗き込むと青い空が広がる作品。コップから見える景色が、窓から外の世界を覗き込むような感覚で、TEZUKAYAMAギャラリーの周りの賑やかな喧騒を消し去り、自然の中にポツリとホワイトキューブが存在しているかのような不思議な感覚に陥ります。

すべての作品が全くアプローチが違いますが、どの作品も鑑賞者が参加・鑑賞しようと能動的に動かないと全てを観ることができない。しかし、そのハードルはとても低く、ビジュアルもとても軽やかで、春の訪れを感じさせる心地よい作品でした。

木藤純子 | Junko Kido

1976年、富山県生まれ。2000年に成安造形大学造形学部造形美術科洋画コース研究生修了。身体を通した空間との対話を繰り返しながら、その場所性を読み解いていくというプロセスのもと構想されたインスタレーション作品を発表。「その場所でしか成立しない作品」として、時の移ろいや、場所の持つ固有の力を借りながら、鑑賞者と場とのランダムな出会いを創出することで、その場に居合わせた鑑賞者の知覚を通じた個人的な体験として、深く感性に呼びかける表現を目指している。

TEZUKAYAMA GALLERYのHPより引用

作元朋子さんの作品

知らない人は驚くかもしれませんが、作元さんの作品は陶芸作品で陶器でできている。自分の概念の陶器とは大きく異なる質感・色味であるため、中々認識するのに時間がかかってしまいますが、紛れもない陶器の作品です。

TEZUKAYAMAさんでよく拝見する作家さんだけど、今回の展示が1番ハマっていた気がします。少し暗めの照明が作る陰影が、カラフルな色味を落ち着かせ、作品の立体感をより強調しており、バックに御村紗也さんの作品があるのもたまらなく良かったです。

作元朋子 | Tomoko Sakumoto

1978年、岡山県出身、在住。岡山大学教育学部卒業、岡山県立大学大学院デザイン学研究科修了。「陶芸の技術を用いて新しい形、美しい色彩を探求することで、陶芸の持つ可能性を広げたい」という作家の思いの元、磁器による立体作品を制作している。一見シンプルなストライプ模様のフォルムは、想像もつかないような緻密な技術と膨大な時間を重ねて制作されており張り詰めた緊張感と美しさを持ったオリジナリティの高い作品へと昇華させている。

TEZUKAYAMA GALLERY HPより引用

ユ・ソラさんの作品

※うまく画像を撮れていなかったので、1つの作品画像のみになってしまい申し訳ございません。

白い布(とてもとても柔らかそうな布)に黒い糸で刺繍を施したシンプルな技法の作品で、モチーフが身近な物や日常の風景が使われています。白と黒というシンプルな色味と、細い刺繍糸という消え入りそうな最小限の表現に加えて、モチーフが身近な物すぎて、鑑賞者の心に深く入り込まず、記憶や心の浅い部分に語りかけてくるような独特の強さを持った作品でした。なんとも言えぬ心地よさは唯一無二だなと。

ユ・ソラ | Sora Yu

1987年、韓国・京畿道生まれ。2020年に東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻修士課程を修了。日本と韓国を拠点に、災害や事故などで突然失うこともある日常や些細な日々をテーマに、白く柔らかい布に黒い糸で刺繍を施し、日常の風景を記録するような立体・平面作品を通じて、日常とは何かについて問い直すような空間をつくりだしている。

TEZUKAYAMA GALLERY HPより引用

それぞれの作家さんの技法や作品の形態は大きく異なりますが、どの作家さんも、鑑賞者に寄り添うような距離感でとても心地よい、独特の雰囲気を持っており、素晴らしい組み合わせだなと感じました。

それぞれの作家さんの作品は、今後もたくさん目にすことがあると思いますが、今回の絶妙な組み合わせを是非ギャラリーで体感してみてください。残り会期は短いですが是非!

 

木藤純子、作元朋子、御村紗也、ユ・ソラ「綠煙晴 ーGreen smoke is clearー」
会期 2024年3月22日~4月20日
会場 TEZUKAYAMA GALLERY VIEWING ROOM
住所 大阪府大阪市西区南堀江1-19-27 山崎ビル2F
電話 06-6534-3993
開館時間 12:00~19:00
休館日 日、月、祝
アクセス 四つ橋線四ツ橋駅5出口徒歩8分
URL http://tezukayama-g.com https://www.tezukayama-g.com/exhibition/spring-show-green-smoke-is-clear
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