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【アートレビュー】「HANKYU ART FAIR」コンコースウィンドー

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前回は「HANKYU ART FAIR」について紹介しましたが、今回は阪急うめだ本店コンコース ウインドーに展示されている作品について紹介します。

前回記事です↓

【アートレビュー】HANKYU ART FAIR 2024

阪急うめだ本店のコンコース ウインドーは、阪急百貨店の東側の通りに面したガラス内の展示スペースです。
幅8メートル・高さ9メートルの迫力のあるウィンドーが7面に渡って展開されており、毎回、楽しみにしている方も多いスペースです。
特にクリスマスの装飾展示はとても人気です。

調べてみると、コンコースウィンドーは1972年より続いているようで、大阪人なら誰でも知る地元民に愛される隠れたスポットです。
余談ですが、コンコースウィンドーの前の通りは、かつて阪急のホームがあった場所だそうです。

今回は、5/29から6/10に阪急梅田本店 9階 阪急梅田ホール・阪急梅田ギャラリー・アートステージで開催されていた【HANKYU ART FAIR】に合わせての展示で、コンコースウィンドーの展示は5/8から6/24まで展示されています。

展示されている作家さんで気になった作家さんについて紹介していきます。

松村咲希

2018年のDMOARTSの個展の際に拝見した時から応援している作家さんです。
着実にキャリアを重ねており、コレクターにも非常に人気の高い作家さんです。
今回は大きなキャンバス作品2点に、松村さんの作品から飛び出たような質感の立体作品や、作品の表面がプリントされたフラッグで空間が構成されています。
それぞれの作品は流石のクオリティでありなが、大きな2作品の様々な要素が外に飛び出たような作品の配置が素晴らしく、松村さんの世界観が見事に表現されていました。

屋内のエスカレーターからはガラスのない裏側から見ることができて新鮮でした。

地下一階では、老舗和菓子屋さんとのコラボ和菓子も。

BAKIBAKI

我が地元で、活躍されている作家さんです。
代表的な活動して十三エリアの「淀壁」が有名で、最初は一つの壁画から始まったプロジェクトでしたが、NAZEさんやBIENさんなど、様々なアーティスト(2024年現在19名のアーティスト)が参加する大規模なプロジェクトとなっています。

今回展示された作品は、BAKIBAKIさんの代表的なBAKI柄の鯉や竹などを、表具師・庭師・木工のそれぞれのプロフェッショナルとコラボレーションした作品とのこと。竹のBAKI柄がいい感じで、和の分野との可能性を感じさせる展示でした。

今回のアートフェアは、椿さんが主導していることもあり、京都芸術大学関連の作家さんがどうしても多くなってしまいますが、BAKIBAKIさんのような、それほど関連性のない作家さんも招待されていることは(しかも重要なコンコースウィンドー展示)、とても素晴らしいと感じました。

たかくらかずき

流石の一言。

デジタルデータ・仏教・キャラクターをテーマに、ドッド絵、3D、ゲーム、NFTなどを用いて作品を作られる、非常に注目されている作家さんです。

今回の作品は、「炎上不動明王」という作品で、ネット上の『炎上』というワードのボリュームによって、作品の炎上度合いが変化する仕掛けのある作品です。右上に『強』とか『弱』と表示されていましたが、現在の炎上の度合いを示しています(私は何度か通って強・中・弱を拝見できました)。

QRコードを読み込むと、ARで文字が出てきたりと、仕掛けも素晴らしく、子供も大喜びでした。
近くで見るのも良いですが、阪急百貨店から阪神方面に向かうエスカレーターから見るのもオススメです。

顧 剣亨

顧さんというと、「デジタルウィービング」という複数の写真をピクセルごとに編み込む写真作品が有名です。織物のような質感を持つ写真作品を通じて、イメージの背後に潜在している文脈を表現されています。

今回の作品もよくよく見ると、ピクセルの抜けのようなものが細かく見られます。
デジタルウィービングの手法によりボヤけることにより、リアリティが欠け、記憶の中にある景色を見ているかのようです。めちゃくちゃサイズが大きいのですが、ボヤけることにより圧を感じない不思議な作品でした。

サイズ的になかなかコレクションは難しそうですが、美術館とかコレクションしないかなと(例えば愛知県美術館さんとかどうですか?)。

油野愛子

この作品だけ景色の反射が強くて写真が上手く撮れていませんが、立体作品「THE HOUSE」は、発泡ウレタンは、空気に触れることで泡を発生し、液体から個体に変わっていく化学反応を活かした立体作品で、膨張するカラフルな物質が、さまざまなモノ(商品)を揃え、様々な人(国籍、経済力、性別、年齢など)が集う百貨店という場をうまく表現した作品だなと感じました。

鮮やかな色彩のおもちゃの家が内面を吐き出しているようにも見えるし、どんどん成長する思春期の体のように、みるみる形を変えて窓や扉から隙間なく溢れ出し、しかもその立体をさらにブロンズに形成しています。

大きな絵画作品「Narrative」シリーズの作品は、アクリル絵具が一定の間スプレーを浮かせる特性や、樹脂の他素材とは馴染まないといったマイナス的特徴を利用し、絵画の見え方に立体的要素を取り入れて表現されています。
水面のような光沢のある樹脂の表面は、重力を感じさせるとともに、静止した時間や、映り込む鑑賞者の顔やカメラを写しとる鏡のようにも見えます。必死に写真を撮ろうとしている自分について少し考えさせられました。

Mon Koutaro Ooyama

初めて拝見した作家さんです。
経歴をみていると様々な活動をされており、ライブペイントデュオとしても活動されているようですね。

遠目で観るとちょっと仏像を描いたような日本画っぽい雰囲気を感じましたが、近くで観ると、ストリート的な要素や左手にスマホのようなものを握るなど現代的な要素が盛り込まれており印象が変わります。他の作家とは少し毛色が違う感じで面白かったです。

今回の展示は、作品を選んでウィンドーに飾るだけではなく、一つの空間を作家に委ねることにより、空間の使い方や表現の手段にバリエーションが出ておりとても面白かったです。

現代アーティストによる展示を定期的にやってほしいなと思わせてくれる素晴らしい企画でした。
次回も楽しみにしています。

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