アートコレクターが発信するアート情報サイト    Art information site sent by art collectors

【アートレビュー】”ボイス+パレルモ”から生まれたグループ展〜「Re:perspective」

大阪の中之島にあるgrafでグループ展「Re:perspective」が開催されています。

このグループ展は、国立国際美術館で開催中の「ボイス+パレルモ」展に合わせた展示となっています。
※grafの場所は国立国際美術館の目の前です。

 

ヨーゼフ・ボイス は、一貫して自由に生きることを訴え、社会のなかに機能する芸術の概念を生み出し、1960年代以降のアートシーンに多大な影響を与えたアーティストとして有名ですが、本展はボイスが参加していた前衛芸術運動である「フルクサス」のメンバーである塩見允枝子や、ボイスの代表的な表現であるフェルトや脂肪など「もの」を用いた表現が共通している小清水漸など、ボイスの表現との共通点を感じさせる6名によるグループ展です。

本展覧会では、かつてヨーゼフ・ボイスも参加していたパフォーマンスを主軸とした芸術運動「フルクサス」のメンバー塩見允枝子、「木」「石」「紙」などの〈もの〉との関係を考察した「もの派」のメンバー小清水漸、ともに戦後美術を支え、新たな芸術のあり方を提示してきた両作家に加え、身体性を伴ったストロークやアウトライン、無意識的な線など、余白や痕跡を残しながら絵画構成を試みる新井碧、美術修復を通じ、物質の特性や彫刻のあり方を研究し、行為や痕跡をたどる事で作品の輪郭を浮かび上がらせる髙橋銑、素材が持つ時間や記憶と向き合い、他者の介入、体験により作品の再定義を行う東畠孝子、身体を用いて行動や私的空間の変化を考察し、日々の生活に生じる抵抗や、摩擦をもとにした作品を制作する宮木亜菜、以上の6名によるグループ展を企画しました。

国立国際美術館で開催される「ボイス+パレルモ」では、ヨーゼフ・ボイスの原点的な初期作品に加え、両作家の師弟関係や教育的観点を紹介し、彫刻や絵画を主軸に物質の外界・社会との接点を試み続けた1960~70年代の作品が展示され、ブリンキー・パレルモを通してヨーゼフ・ボイスをより深く考察出来る構成となっております。それに対し、本展「Re:Perspective」は異なるアプローチではありながら、作品制作や社会との関係を新たな視点から模索する、実験的な機会となれば幸いです。

 

この展示の面白いところが、ボイス・パレルモと連動させた展示であるという点と、graf porchという宿泊施設(生活空間)での展示であるという点です。

宿泊施設での展示が、友人の家に遊びに行ったような気軽な感覚で見ることができますし、ホワイトキューブとは異なる雰囲気が、アートを自宅に飾るイメージを持ちやすく、初めてコレクションするような方にも非常に参考になるかと思います。

また、grafは大阪を拠点に、家具・空間・プロダクト・グラフィックのデザインから食、アートにわたってさまざまなクリエイティブ活動を展開する関西では非常に有名な会社で、展示空間であるgraf porchの1階にあるカフェやショップには感度の高い人々が集うため、今まで現代アートの展示を見る機会が無かった層にもアートの面白さを伝える一助になりそうです。

こういった生活空間を意識したスペースでの展示は近年増加傾向ですが、テーマのない展示になりがちです。今回の展示はボイス・パレルモを意識し、ボイスに関連した、もしくは関連性を感じられる作家で展示が構成されているため非常にまとまりが感じられますし、塩見允枝子小清水漸などのベテラン作家に加え、新井碧さんのように現役大学院生の若い作家の作品をフラットに展示することにより、重くも軽くもなりすぎずに、心地の良い展示空間となっていました。

中でも新井碧さんの作品は、今まで見た新井さんの作品で一番良かったのではないかと感じました。

 

ボイス・パレルモと合わせて是非ご覧ください。

宮本亜菜「Lemmon-3」
東畠孝子「Inside out」

 

東畠孝子「From the Other side」
新井碧「手繰り寄せる#3」

 

新井碧「手繰り寄せる#4」

 

「Re:perspective」
期間 |10月12日(火)〜10月24日(日)
時間 | 11:30-18:00
定休日 |10月18日(月)
※graf studio(1F)は17日(日)、18日(月)、24日(日)が定休日
場所 | graf porch(大阪市北区中之島4-1-9 graf studio 2F)
最新情報をチェックしよう!