「Skin Unit」
大阪の Gallery Nomart で2020年10月31日まで開催されてる木村秀樹の個展のアートレビューです。
木村秀樹は、国内外の様々な美術館に作品が収蔵されている日本を代表する現代版画作家です。先日のartTNZでも名和晃平と同じブースで展示されていたのでご覧になった方も多いかと思います。
版画をベースとしている作家ですが、常に版画の技法を取り入れた新たな表現を発表しており、今回もスキージングという独自の技法による作品を中心とした展示です。
スキージングとは、シルクスクリーン版画の刷りに用いる道具「squeegee」に「ing」をつけた造語で、スキージにローラーの性質を加味した自家製の道具を使い、アクリル絵具の層をキャンバスに定着させる技法です。
ノマルでは、2018年の「Period 7: Charcoal / Future」以来の2年ぶりの展示です。同様のスキージングを中心とした個展は、2017年に「Period 6 : Squeegeeing」というタイトルで実施されました。
メインスペースである1階の展示スペースには、広さを生かした大きな作品が展示されています。モチーフは明確ではありませんが建築物のような雰囲気です。
キャンバスに塗られた青いペイントの上に、薄い透明の膜がスキージングにより塗られています。スキージングはマスキングして行われているため、大小の窓のように分けられ、それぞれが異なる表情を見せています。
近くで観ると、設計図を書くときのような白い線が見えます。
ペンか何かで引いているのかと思っていたのですが、この線はシルクスクリーンでわざわざ描いているようです。シルクスクリーンで行うことで線が少し隆起しています。版画家としてのこだわりを非常に感じるポイントです。
2階には比較的小さなサイズの作品が並びます。タイトルから分かるようにケーキがモチーフの作品です。
全ての作品が非常に高いクオリティーで、思わず「カッコいい」と声が出てしまう展示でした。
どの作品も、建築の設計図のように細かくスキージングを行っていることにより奥行きのようなものが生まれ、黒い背景やシルクによる線の隆起により、作品に立体感を生んでいます。
木村さんの凄さを感じることができる素晴らしい展示でした。