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【書籍レビュー】BRUTUS No.1010「小さなアートと暮らしたい。」

今、コレクター界隈で話題ですが、久しぶりにBRUTUSがアート系の特集をしてくれました。

アートバブルが終わった、今だからこそ特集してほしかった内容で、数年前に販売されていた様々なアート特集の雑誌とは違う、とても良い内容でしたので紹介させていただきます。

コロナ禍でのアート特集

コロナ禍でのアート需要の増加と、投機目的での購入者の増加により(他にも理由はありますが)、一気にアート購入に対する注目度が高まったアートバブル的な状況だった数年前は、雑誌・テレビなど、様々な媒体でアートの特集が組まれていました。

特に投機目的の購入者のパワーが強く、メディアでも「アート投資」という部分が強く押し出された企画が多い印象でした。

私の方にもテレビや雑誌からオファーをいただきましたが、いくつかお断りしましたし、協力した媒体も、いかに投機色な目線ではない視点でアートコレクションの楽しさを伝えられるか工夫しながら対応するのに苦労しました。

書店にいっても、アート投機関連の文庫本が沢山平置きして陳列されている様子は、少し異様な光景でした(今は棚に陳列されてますね)。

アートバブルの崩壊という言葉が正しいか分かりませんが(投機目的の購入により、本来の価値より過剰に値上がった部分が正常化した状態なのかなと思っています)、アート投機的な部分が落ち着いてきた今、一気にアート関連のメディア企画が少なくなったような気がしていましたが、今回のようにBRUTUSという様々なカルチャーを紹介する雑誌で、このタイミングで企画されたことに意味があると思いましたので今回は雑誌の内容について簡単に紹介していきたいと思います。

雑誌の目次

【特集 小さなアートと暮らしたい。】

  • Marco Velardi/『Apartamento』編集長
  • 柏崎亮/<Hender Scheme>デザイナー
  • 吉田怜香/<TODAYFUL>ディレクター
  • 柏田テツヲ/写真家
  • 機山 敦/<BARBER BOYS)オーナー
  • TaiTan /ラッパー
  • 江口宏志/蒸留家
  • 外山雄一/<YUICHI TOYAMA.>デザイナー
  • 小酒井祥悟/アートディレクター
  • 中山まりこ/<MADISONBLUE>デザイナー
  • Ari Marcopoulos /写真家

【アートコレクターのはじめて物語。】

  • 片山正通
  • 高橋龍太郎

【キム・ジョーンズ邸に飾られる小さなアート、大きなアート。】

【中島セナがギャラリーを訪問!】

【「アートを買う」の基礎知識。】

【37のギャラリーとショップが推薦!今買うならば、このアート。】

【小さなアートの飾り方、あれこれ。】

【アーティストの好きなアーティスト。】

田名網敬一/毛利悠子/河村康輔

【アーティスト・インデックス】

雑誌の内容から感じること

以下は、雑誌の冒頭に書かれている文章です。

部屋に一つアートを飾ってみるだけで、不思議と毎日は変わるもの。

力強い絵に日々のエネルギーをもらうファッションデザイナー。飾る場所を替えることで、モノを見る目をリフレッシュする写真家。

さまざまな理由で、アートを暮らしに取り入れて過ごす人たちがいます。

今回の特集で取材をしたコレクターの方々も、最初の一歩は小さな作品を買うことから始まったと語ってくれました。

知れば知るほど、身近な存在に。まずは小さなものから始めませんか?

アートを買う際の基礎知識、飾り方あれこれ、今こそ買うべきアートまでガイドします。

<BRUTUS No.1010 p.13 より引用>

 

サラリーマンコレクターなら、皆さん共感できますよね。
アートを飾ったことがなかった頃と、小さい作品でも1つ自宅にアートを飾った時では、QOLが桁違いに違うというか、アート作品が自宅にあるということにワクワクしていましたよね。もちろん沢山コレクションした今でも自宅に飾っているコレクションを観るとワクワクするのですが、最初の一つ目の作品をコレクションした時の、喜びと高揚感は特別な感覚でした。

値段が高かったり、大きな作品ではなくて、自分自身無理のない範囲の、小さい1つのアート作品を初めて購入して飾ってみることは、少なからず、その後の人生に良い影響を及ぼしていくのではないかと思います(それは、その後もアートを買っていくということでなくても)。

このサイトの立ち上げの時からお話ししていますが、アートを買ったことのない人には是非、一つ作品を買ってみてほしいというのが、私の思いでもあります。

【コレクション講座】アートを買うということ。

【コレクション講座】アートを買ってみた。

【コレクション講座】どんなアートを買う?

特に最初の作品は何も考えずに好きな作品を買えばいいのかなと思いますが、雑誌の中で 柏崎亮 さんが以下のように話されています。

「どんな作品が好きかという嗜好性はあると思うんですけど、自分でも言葉にできるほどにはわかっていません。相対的に価値があるかどうかなどは考えず、衝動的に選びますね。むしろアートに不勉強な視点で選べる方が、豊かなんじゃないかなとも思うんです」

<BRUTUS No.1010 p.16 より引用>

この言葉、少しズシリときました。
アートについて詳しくなってくると、どうしても雑念が入ってきたりしてしまう。雑念が強く入ってしまって購入した作品は、見ていてもどうしてもモヤモヤしてしまうんですね。やはり自分の「好き」と思える感性で作品を選ぶのが大切だと思います。

このように様々なコレクターさんのインタビューが掲載されていますが、皆さんの考えは千差万別で、コレクションは自由で好きなようにすればいいんだなと、改めて考えさせられます。

この雑誌では様々なコレクターのインタビューもとても面白いのですが、コレクターそれぞれのコレクションが掲載されているので嗜好の違いも感じ取れてとても面白かったです。特にキム・ジョーンズさんのコレクションは、流涎ものの作品ばかりですし、 柏田テツヲさん や 小酒井祥悟さん のように、アートと植物、工芸、などを組み合わせて展示されているのはとても興味深かったです。

P.45 から P.66 まで掲載されている「今買うならば、このアート」もマニアックな作品が多くて、知らない作家も沢山いたので参考になりました。結構、初めてアートを買う層には少しハードルが高そうな作品が多かったですが…。

アートバブルが終わった今、この企画を提案して実行してくれた関係者の皆さんに拍手を送りたいと思える雑誌でした。また、懲りずにアート特集を組んでくれることを期待しております。

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