109億円で落札のバスキアと日本にあるバスキア作品について
ZOZO TOWNの創業者で、実業家である前澤友作さんが所有していたジャンミシェル・バスキアの作品「Untitled」が、18日にアメリカのオークションPHILLIPSで競売に掛けられ、約109億円で落札されました。今回はその作品と前澤さんが所有するもう一つのバスキア作品について、そして、日本にあるバスキア作品について調べてみました。
109億円のバスキア作品
サイズ:239.4 × 501 cm
制作年:1982年
技法:キャンバスにアクリル、スプレー
この作品は、縦約2.4メートル・幅約5メートルと非常に大きくバスキアのキャリアでも最大級の作品と言われています。
また、制作年の1982年はバスキアの「アナス・ミラビリス(驚異の年)」とも言われている時代であり、1996年出版のカタログ・レゾネの表紙となったり、いくつかの回顧展でも目玉作品として紹介された代表作といえる作品です。
前澤さんは2016年5月にクリスティーズ・ニューヨークで、この作品を約62億円で購入し、当時のバスキアのオークションレコードとなり話題となりました(その一年後に前澤さんが、別の作品「Untitled」(1982)を約123億円で落札したことにより更新されました)。
お金の話になってしまいますが、6年で62億→108億と46億円の上昇です!
ただ、落札時の当時の為替レートが約108円前後ですので、当時のレートに直すと今回の落札は約92億円ということになります。それでも30億円の上昇ですね。
今回の落札を受け前澤さんは以下のコメントを残しています。
「アートコレクションとは、自身の成長・変化と共に、常に進化を続け、なるべく多くの人々に共有されるべきものだと信じています。この素晴らしい作品が次の持ち主へと受け継がれ、世界中の人々に楽しんでもらえることを心より願っています。そしてまた、進化を続ける私のアートコレクションを、近い将来完成予定の私の美術館で皆さまにお披露目できることを楽しみにしております」。
ー美術手帖(https://bijutsutecho.com/magazine/news/market/25610)より引用
このコメントで嬉しかったのは、前澤さんの口から久しぶりに美術館構想の話が出たことです。
以前はよく話題となっていましたが、ここ数年は話題となることも少なく、前澤さんもコレクションをいくつか手放していたため、立ち消えになったのかなと思っていましたが、進んでいるようですね。
123億円のバスキア作品
もう一つ忘れてはいけないのが、前澤さんが所有するもう一つのバスキア作品です。
制作年:1982年
技法:Oilstick, acrylic, spray paint on canvas
サイズ:183 x 173 cm
2017年5月、サザビーズ(ニューヨーク)の現代アートイブニングセールで前澤さんが約123億円で落札した作品です。
バスキアのオークションレコードとアメリカ人アーティストの歴代最高落札価格を更新したことで話題となりました。
現代アートコレクターとして知られるスピエガル夫妻が1984年に約200万円(!)で購入し、それ以来、展示されたことがなかった作品で、1982年の制作やサイズなど条件も揃っており、オークション開始前から非常に注目が集まっていました。オークションでは3名の競りとなりましたが、見事前澤さんが落札された作品です。
このタイミングで、前澤さんはバスキアの世界最高額1位と2位の作品を所有していることになり、世界的に注目される存在になりました。
375万円で購入したバスキア作品
国内には、ベネッセハウスミュージアム(香川)・北九州市立美術館(福岡)・福岡市美術館(福岡)・中之島美術館(大阪)などで、バスキア作品は収蔵されていますが、その中でも注目すべきなのが、北九州市立美術館です。
北九州市立美術館の収蔵作品「消防士」は、
なんと1984年に収蔵されています!
バスキアのデビューは1981年で、亡くなったのが1988年であることを考えると、ほぼ日本では無名の存在といえる時代です。
83年に東京の小さなギャラリーで開かれた日本初の個展で、当時の学芸員が目を留めてコレクションに繋がったようですが、
その価格なんと375万円!
縦164・8・横230 cmの大作で、バスキアと交際していた女性のけんかを火消し役の消防士が止めに来ている絵とされています。
オークションに出せば100億近くになる可能性もあるかと思いますが、バスキア作品を国内で見れる機会は限られるので(特に大作となると稀)頑張って収蔵し続けていただきたいですね。
まとめ
今回の記事で間違えてはいけないのが、バスキアだから上がったという単純な話ではなく、この作品だから高額落札されたということです。
- サイズ(そもそも市場に出回る作品数が少ない中で、このサイズが出回るのは稀)
- 制作年(アナス・ミラビリスと呼ばれる1982年の制作であること。
- 展示歴(回廊展の展示歴やカタログレゾネの表紙など)
- オークションレコード(この作品の前回の落札からオークションレコードが更新され、出品時点で4番目の価格であった)
など条件が揃っていて、純粋に見てもいい作品だと思える良作だからです。
アートバブルは少し落ち着いてきている印象ですが、今回のようにマスターピースとなるような作品はしっかりと残っていくと思います。
マスターピースとなるような作品をコレクションできるように審美眼を養っていきたいですね。