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【アートレビュー】版画技法から生まれる自由な表現〜「Linocut」

リノカット Linocut

ギャラリーノマルで開催されているグループ展「リノカット Linocut」にお伺いしてきました。

本展は、リノカット(凸版技法の一種)に特化して6名の現代美術作家に作品の制作を依頼しています。いずれのアーティストも作品制作としては初挑戦となる技法で、版画工房を有するノマルの実験的な展示です。

運営者 播磨
リノカットとは、凸版技法の一種で、床材に使用されるリノリウム(よく厨房などの床で使われている素材です)を版に用い、彫刻刀で彫る技法です。リノリウムは安価で刷りに対して丈夫で、やわらかく、木目の方向の制限がなく彫りやすいが、繊細な表現には向かない特徴があります。この技法の特質をよく活かした作家としてマティス、ピカソなどが有名です

参加アーティストは以下のメンバーです。

  • 今村 源
  • 稲垣 元則
  • 田中 朝子
  • 張 騰遠
  • 東影 智裕
  • 山田 千尋

版を手で彫りローラー等を用いて紙に刷りとる極めてシンプルな技法ゆえ、幼少時代に経験された人も多く、古くから愛されてきた版画技法での制作を、デジタル時代の今、改めて試みることで、プリミティブな作品制作の魅力を提供する機会となることを目論んだ今展。普段より特徴ある作品を制作する各作家がどの様にこのテーマを消化して独自の表現に落とし込んでいくか?展覧会の開催を楽しみにお待ちください。

<ギャラリーノマルHPより引用>

<林 聡 (ギャラリーノマル・ディレクター) コメント>

リノリウム版画ーリノカットはピカソやマティスで有名ですが最もシンプルな版画です。木版画と同じ凸版ですが木目の方向などの制約もなく、より柔らかく彫りやすいのが特徴です。よく小学生の教材に使われるのもその特性からでしょう。今企画はシンプルだからこその本質が現れるリノリウムと彫刻刀そして和紙のみから生み出される版画を集めたグループ展です。日頃使っているメディアを離れて自由にアプローチすることで新しい発見が生まれてくると思っています。リノカットから出発して、そこから自由な拡がりを生み出します。

 

会場ではリノカットを刷るために用いられる機械が空間に配置されています。これは制作現場を再現したというだけではなく、会期中に実際に作家やノマルの刷り師が機械を用いて作品の制作を実演するようです。

なかなか刷る現場って見れないと思うので、是非見てみたかったです(タイング合わず見れませんでした…)

以下、各作家の作品の一部を掲載します。


山田千尋

 

今村 源

 

稲垣 元則

 

田中 朝子

張 騰遠

東影 智裕


どの作品もリノカットという技法で作られていますが、同じ技法で作られたとは思えないほど、それぞれ作家の特徴が出ていました。

同じテーマ縛りでのグループ展はよく目にしますが、同じ技法縛りでの展示はあまり目にする機会がないので、比較できて面白かったです。

版画技法の可能性を感じる展示でした。

2021.9.4(sat) – 2021.10.2(sat)
13:00 – 19:00 日曜・祝日休廊

 

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