今村源個展「流れること / 留めること Streaming / Staying」
大阪のGallery Nomartにて、今村源さんの個展が開催されていたので拝見してきました。
今村源さんは、1957年大阪生まれ、1983年京都市立芸術大学大学院美術研究科を修了され、いずれにも寄らない独自の哲学的作風で早くから注目を集め、国立国際美術館や兵庫県立美術館などの日本各地の美術館でのパブリックコレクションや、「第35回 中原悌二郎賞優秀賞」や「第28回 京都美術文化賞」を受賞するなど、関西を拠点に活躍されている作家さんです。
今回は、グレーの針金で様々な生物を成形し、意図的に潰した立体作品を無数にギャラリーの壁面に展示されていました。それぞれがオレンジの一本の糸でつながっており、モーターを動力に糸が動くことで作品が回転するインスタレーションです。
同じスピードで持続的にモーターは動いているのですが、糸が直線的に繋いでいるのではなく、屈折させながら繋がっているため、糸の張り具合に差が生まれ、それぞれの作品がバラバラに、そして不規則な動きを見せます。頻繁に回っている作品もあれば、なかなか動かない作品、急に動き出す作品もありました。
ギャラリーの壁面のあらゆる場所で回転するユニークなインスタレーションと合わせて、中心には雲を投影した作品が展示されています。
今村さん自身がモチーフの大きな作品です。一旦人型に成形した後、プレスして潰している作品です。正面から見ると円形の作品だということしか分かりませんでしたが、横から見ると人型であることが分かります。
インスタレーションのために制作された2Dの針金彫刻を描画素材として使用。インスタレーションのイメージを題材に、複数の針金彫刻を透明フィルム上で組み合わせたものを1つの版として、2パターンの作品を制作。1つはシルクスクリーンでのグレーのグラデーション刷りを3版重ねた上にベタ1刷、その上からオレンジの線のイメージを1版刷った後、専用の針金版をそのまま使用してプレス機でエンボスを1刷り。計6版を重ねグラデーションの視覚効果とエンボスの凹凸によって深い奥行きが感じられる2作品が完成。もう1つは今回のインスタレーションの中でも目を引くモチーフとなっている等身大の自刻像(ぺたんこになり渦上に巻かれた)をストレートにイメージした、エンボスなし、シルク3版刷りのシンプルな仕上がりの作品。
上の画像が完成作品で、下の画像が使用されたモチーフ作品です。
作家・ギャラリーのこだわりが感じされる素晴らしい展示でした。
受動と能動の狭間を作品とともに揺れ動く、体感的展示空間
今村は以前より、運動と静止の均衡が保たれた状態に関心をもち、独楽(コマ)や振り子といったモチーフを作品として登場させてきました。それは固定された状態(硬く強い彫刻、あるいは当たり前とされる常識)へのアンチテーゼというより、そうした状態を内包する自我からの脱却の試みとして、ながらく今村のテーマとなっています。 今回の展覧会では、グレーに着色された針金を素材に、平たく成型された様々な生物のかたちをした無数の彫刻が一本の糸でつながり広い画廊壁面の其処此処でクルクルと回転している、ユニークなインスタレーションを中心に、作家初となる映像を用いた展示も予定。 またそれ以外にも、今回のテーマから発案された、インスタレーションに用いられる彫刻作品を使用した新作版画も同時並行で制作中です。
ユニークな表現の中に深い想いが込められた今回の展示と作品の数々を、ご高覧くださいますよう、どうぞよろしくお願いいたします。
ーGallery Nomart HPより引用
流れること / 留めること
Streaming / Staying
今村 源
Hajime Imamura
2021.6.5(sat) – 2021.7.3(sat)
13:00 – 19:00 日曜・祝日休廊