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【アーティストインタビュー】#020 宮原野乃実

【アーティストインタビュー】#020 宮原野乃実

 
  • 1992年 東京都生まれ
  • 2015年 京都造形芸術大学 美術工芸学科 総合造形コース 卒業

 

京都造形芸術大学卒業後、ARTISTS’ FAIR KYOTO2019での展示や東京、台湾での個展で話題を呼び、カーサ ブルータス 2020年6月号『日本の現代アートまとめ。』ではNEW GENERATION特集で紹介されるなど注目の作家。

 
 
運営者 播磨
数年前に「ざくろ」シリーズをオンライン上で拝見して、陶製手榴弾とジオラマの組み合わせがとても面白く、どういうコンセプトなのかずっと気になっていました。カーサ ブルータスで紹介されていた作品もとても気になったので今回インタビューをお願いしました。
 
 
自己紹介をお願いします。
宮原野乃実です。2015年春に京都造形芸術大学を卒業してから、東京を拠点にして活動しています。
 
作風やコンセプトについて説明してください。
自分の身近な場所や訪れた土地の過去、日本の近現代史と自分自身の関係や、直接経験していないことに対して自分自身がどうアプローチができるのか、どういう風に捉えることができるのか、というのを軸に制作をしています。
自分自身で捉えたその土地の歴史だったり現代との関係性をジオラマに起こして、それを自分自身で俯瞰しながら考えるための作品をこれまで制作してきました。
 
代表作である「ざくろ」シリーズについて説明してください。
私は大学時代に陶芸を専攻していたこともあり、一時期は骨董市によく通っていて、変わった陶器があると自分で買ったり調べたりしていました。

陶器の手榴弾も元々存在自体は知っていたのですが、骨董市で見かけたことをきっかけに改めて調べてみると、昔、埼玉の方に陶器の手榴弾に火薬を詰めるための工場があったらしく、今でもその周辺には破片が落ちているらしいということがわかり、実際に行ってみると、河原の辺り一面が割れた陶器の手榴弾で埋め尽くされている場所を見つけました。そこで手榴弾の欠片を拾い集めている時に近所のおじさんが話しかけてきてくれて、「陶製手榴弾が実際に拾えたり生で見れる状態になっているのはここの河原だけだけど、住宅地の地面の下とか、近くのコンビニの下とかもちゃんと掘って調べたらそっちも手榴弾が出てくはずなんだよ」と教えてくれました。

自分が立っている地面の下にはこれまでの時間が埋まってるとか、過去の歴史の上に自分が成り立っているんだよっていうのを比喩で言われることはあるんですけど、それがそのまま形になっているっていう状況がもの凄く面白かったのと、戦争は日本の歴史上とても重要な出来事でこの辛い経験を忘れないように向き合わなくてはならない、みたいなことを言われていたりするのに、その遺産をそのまま放置して(下にあるものたちはある意味見ないように、気づかないふりをしようと無視して?)その上に生活の場を築いていける図太さに興味を持って、この作品ができました。
 
自分の優れていると思う点はなんですか?
私は作品の素材に、陶製手榴弾とか陶片、サンゴなど様々なものを使っているのですが、基本的には実際に作品の題材となる場所を訪れて、そこで取材しながら自分自身で集めたものを使っています。そのためのフットワークはかなり軽い方だと思います。
 
苦手なことはなんですか?
英語がとにかく苦手です。今後の課題でもあります…。
 
影響を受けたアーティストは誰ですか?
現在取り組んでいる新作シリーズは、関西の美術家集団”The PLAY”の「TOROKKO ANOTHER WAY TO PLAY」という沖縄の南大東島を舞台にした映像作品から影響を受けて作り始めました。私が大学生の時に、確か国立国際美術館だったと思うのですが、展示で見たのがきっかけです。この新作は今年お披露目できればいいな、と思っています。
 
どんな子供でしたか?
工作が大好きでした。お絵描きよりも工作です。図工の時間にノコギリの使い方を教えてもらったのですが、私はノコギリを使って木を切るのが早くて、それが自慢だった時期がありました。
 
アート以外で好きなことはなんですか?
旅行です。基本は一人旅です。これまでの行き先は島が多いです。旅先ではレンタルバイクを借りたりする時もあって、島中を走ったりするのも好きです。
 
1番思い出に残っているプロジェクトや作品はなんですか?
取材で言うと取材先はどれも思い出に残っています。小笠原や南大東島では、どちらも行った先でバイク借りて島中走りまわって大コケしたり、よくずぶ濡れとか泥だらけになっています。先日行ったサイパンでは映像を撮影中に野良犬に吠えられて追いかけられました。

「DRIFT」という陶器の欠片を使う作品シリーズがあるのですが、陶器の欠片を集めるのも継続してやっていて、リュックサックを背負って電車で海に行って何時間も日焼けしながら陶器のかけらを拾い続けて、それを背負って帰ってくるので、全身筋肉痛になったりします。今までに200kg以上は陶片を集めてきました。作品の素材集めやリサーチはいつもハードです。
 
夢を教えてください。
今後も制作を続けるというのは大前提としてですけど、私の作品は自分の身近な土地だったり、訪れた場所の近現代史を題材にしているので、自分と全く違うバックグラウンドを持ってる人たちに観てもらったらどういう反応をもらえるのだろうか?ということが頭の片隅にあります。

例えば、遠い地球の裏側という意味では南米とか、そういう自分がまだ行ったことがなかったりとか、全然違うバックグラウンドを持っている人がいる場所に展示をしに行ったり、私の作品が招待されるとか、そういうことになったらいいなと思っています。

ざくろ#67
2019年
陶製手榴弾 ジオラマ模型 新うるし 真鍮粉
128×130×105 mm

 

DRIFT #14
2018年
陶片 ジオラマ模型 セメント ポリスチレン 新うるし 真鍮粉 
160×280×185 mm

誰かの基地 #8
2017年
戦跡の瓦礫、ミニチュア、新うるし、真鍮粉
110×207×175 mm
幽霊のいる島(小笠原)#2
2018年
珊瑚 鯨の歯 陶片 ジオラマ模型 セメント 新うるし 真鍮粉 オーガンジー
220×230×165 mm
YESTERDAY’S GHOST / 2019年 谷居 GuJu 台北
展示風景

 

 
http://syuumatunoart.com/2019/10/30/【アーティストインタビューまとめ】/
過去のインタビューはこちら

 

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