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一林 保久道

 

1992年石川県生まれ

京都精華大学日本画専攻卒業

 

2020年に銀座蔦屋書店で開催されたグループ展「Input/Output」で、山本捷平・川内理香子・菅原玄奨と共に展示され話題となり、「DELTA Experiment」への出展や「NIKE OSAKA」のShop Wallを担当するなど、様々なフィールドで注目を浴びる若手ペインター。

日本画の香りをかすかに残しながら、ゲームの画面のような怪しい色合いで描かれたキャラクターや社会を風刺したような街景画、他では観たことがないような独特な表現が気になっていたためインタビューをお願いしました。

 
 

自己紹介をお願いします。

一林保久道です。ちょっとアーティスト名っぽいって言われますがこれが本名です。生まれは石川県の金沢から近い小さな街の出身です。京都精華大学の日本画専攻で学んで、卒業してからは東京で活動をしています。

 

作風やコンセプトを説明して下さい。

作風に関しては作品の中に3つの要素が入っていると思います。伝統的な掛け軸とか屏風とかの昔の日本画、ゲームの画面構成、歴史です。歴史を追っていくと現代に辿りつきますが、現代の情勢とか政治的な内容を直接的には入れずに、作品で匂わせるちょっと風刺のきいた感じで表現するのが僕の作風です。

コンセプトは作品によってちょっと変わりますね。現代を生きている人間ですから過去のものを踏襲して描いたりとかはあまりしないですが、昔の合戦屏風を描いた人間って、その時代の人が当時に起きていたことをニュースペーパーのように描いてたのかなと自分の中でシュミレーションしていて、自分もそういう姿勢で作品のコンセプトを引っ張り出し て、そこから噛み砕いて作品の中に落とし込めたらなと思っています。

 

「Input/Output」で展示された「Pressure」について説明してください。

「Pressure」という作品は、コロナの問題からの想起した作品です。予定していた展示も延期になって、僕の生活でも急激な変化が生じてきました。

家の中で閉じこもっているのでテレビを見ていたら、アメリカがBlack Lives Matterで揉めてるし、中国は国家安全法で香港と揉めていたり、世界の2大トップの中国とアメリカが暴れに暴れまくっていました。世界の他の国は気を遣って化粧品に美白って言葉を使わなかったり、中国の悪口を言わなかったり、どんどんむこうの都合で自分たちの生活が変わっていっているなと思いました。直接影響を受けている身じゃないのですがプレッシャーが凄かったんです。急に生活が変わる感じにめちゃくちゃ圧迫感を感じてあの作品の感じが出ました。

作品を見ると、上下で人が争っていて、真ん中で街並が押し潰されています。真ん中の風景は僕たちが住んでいる普段の生活圏の街と、今まで築き上げてきた文明の発展みたいなものを表していたんですが、急に起きたコロナとかの争いで押し潰されていくことを表現した作品です。

僕の作品で決めていることとして、人間同士の争いは描きたくないと思っています。この作品に描かれているのも人間ぽくないキャラクターなんです。 キャラクターを描いている理由が、ジェンダーの配慮や人種の配慮が過剰に強くなりすぎ て表現の自由を奪われるようなものであったら、今後争いをしたり何かしらの場面を描いたりする時に、人間を描かない方がいいんじゃないかと思ったからです。

趣味であるゲームでは、キャラクターという人間を想起させるもので争わせたりしているので、そうやってワンクッション置いて、キャラクターで争いを表現したら、不思議なもので可愛いとか面白いとかっていうふうにスッと入ってくるんですね。それをちょっと利用して、作品のなかで争ったりする場面も人間の形をしているけど人間ではない別のもので動いてもらい争ってもらおうと思っています。

 
「Pressure」
 

自分の優れていると思う点はなんですか?

観察力ですかね。小さい頃から自然の中で虫を捕まえたりザリガニを釣りに行ったりしていたので自然と洞察力というか観察力が身につくんですよ。

それが作品を見たり、観察したりするときに自分の中で認識して、自分の頭で理解してアウトプットするみたいなところに繋がっているのかなと思います。それが人によっては目に見えない、感じない感覚だと思いますが、それが作品に活きているんじゃないかなと思っています。

 

苦手なことはなんですか?

スケジュール管理ですね。締め切りの日が決められる生活が多いんですけど、スケジュールまでの期間にどれだけ出来るかを算出せずに漠然と何個作ろうとか思ってしまいます。

その作るものも、どれくらいの規模でやれば締め切りに間に合うっていう計算が全然できてなくて、いつも締め切り1週間前とかは死にそうな顔をしています。例えば展示の話をギャラリーの人とした時に、あれ面白そうだね、あれしたいねみたいな話になったりするとそれを全てクリアしようとしてしまうんですよ。

それが一層自分を苦しめてて、話し合いを終えて家に帰った後、うわやっちまった!また無理言っちゃった!ってなります。多分いつかそれで痛い目にあうんだろうなと思っています(笑)

 

影響を受けたアーティストは誰ですか?

僕の音楽の感性と似ているんですが、すごく好きだと思うミュージシャンがいたら、ずっと聞いてある時を境に飽きたりして聴かなくなる、っていうのを繰り返して音楽をいろんなところまで聴くタイプなんです。なのでアーティストとしても自分の人生に明確に影響を与えた人は少ないんですが、1人だけ挙げるとしたら、Dan Hernandezという作家ですね。ニューヨークを拠点とした作家で、テーマが古典絵画とゲームです。構図がめちゃくちゃ面白いけど、テンペラで描いていてこのボリュームっていうのは人間の限界に挑戦しているな、勝てないなと思いますね。

 

どんな子供でしたか?

先ほどと少し被りますが、友達を遊ぶこともあったけど、1人で出歩いて、近くの原っぱで虫とか蜥蜴を捕まえたり、家でゲームをしていましたね。育ちが田舎だったのであまり美術が身近じゃなかったですね。

小学校高学年くらいに金沢21世紀美術館が出来て、そこで現代アートの展示が行われている認識はあったんですけど、その時は絵を描くのは好きだったんですけど、別に絵を観る事には興味はなかったんです。高校生でも落書き程度に絵を描いていて、クラスの周りの子に絵がうまいとか漫画家になれるんじゃないって言われて、初めて漫画を描いてみたんです。独学で勉強したんですけど、その時は根本的にあまり絵が上手くなく中途半端だったんで、徹底したいなと思って美大に入りました。

 

アート以外で好きなことは何ですか?

生物とか歴史のドキュメンタリー番組を見たり、YouTubeからナショナルジオグラフィックのチャンネルを見たり、自然をテーマにしたものを見るのが好きですね。最近は忙しくてできていませんが、いまだにゲームはめちゃくちゃ好きです。

あとは、コロナのせいで出来ていないですが海外旅行は好きですね。現地に誰かしら知り合いがいれば、その国に行ってみようと思いますね。香港とか上海とかヨーロッパだとイギリスとかドイツとかに行きました。海外の文化圏の違いに興味を持っていて、資料館みたいなところに行ってその土地の歴史とかを見て、そこで経験した事も自分なりに作品に活かしたりしています。

 

1番思い出に残っているプロジェクトや作品はなんですか?

2年前に東京の半蔵門にあるAnagraというギャラリーで展示したのが、自分のターニングポイントでしたね。 というのも、Anagraでの展示以前の作品は、自分の絵柄が確立する前の作風で、いろいろと試行錯誤して探っていて自分の作品に自信が無くてふわふわした状態でした。 

Anagraでの展示の時には、自分の中で確立したものが出来上がったなと自信がついていたことと、作品をInstagramで見て買いに来てくれたコレクターさんがいたり、Anagraの界隈の人が来て作品をいいねって言って頂きました。頑張った結果が出始めたのかな、もしかしたら出来たのかもしれないなとちょっとした片鱗みたいなものが見えたのでそこから自信がつき今の作風で行こうと思いました。 今後、このスタイルをずっと続けていくかは全くわからないですけど、自分の自信につな がる作品ばかり描けてるなという安堵感はあるので、それに準じて作品を作っていきたいなという感じです。

 

夢を教えて下さい。

 外国に住んでみたいですね。住むといっても環境が整った上で住むという意味です。一生をそこで終えるつもりはありませんが、長い間そこに住んで制作できるようにしてみたいという夢がありますね。

漠然としていますけど、日本だけしか知らずに死んでいくのはもったいないな、何もできずに旅行者として死んでいくのも面白くないなと思っていて、全く違う文化圏で、知らないものを身近に感じたり全く違う感性の人たちと身近に触れ合ってみたいという憧れがあります。そういう経験をして、基盤を作って日本で最後まで生活したいですね。自然に囲まれた環境が好きというのが根底にあるのですが、アーティストで生活を築き上げられていないという理由でまだ住めていないので、そこが確立できて住める環境にできたらと思っています。

 
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