稲垣元則 個展 「Atlas」
2020.6.20 sat – 7.18 sat
13:00 – 19:00 / 日曜休廊
https://www.nomart.co.jp/index.php
ギャラリーノマルで開催されている稲垣元則さんの個展にお伺いしてきました。
確か、2年ほど前にも個展で稲垣さんの作品を観ましたが、今回もとてもいい展示でしたので紹介いたします。
刻々と変化する時間の流れを茫洋と広がるアトラス(地図)になぞらえ、
映像とドローイングによるインスタレーションで可変的に構成する、
稲垣元則2年ぶりとなる実験的な展覧会
稲垣元則は90年代初頭よりB4サイズのコピー用紙へのドローイング開始。以降継続的に制作を続け、その数は現在で1万点以上に及びます。また2000年代に入ってからは写真や映像による作品作りにも積極的に取り組み、他と比較し得ない独特な作風で高い評価を獲得しています。
主に木立や海の波間といった自然の風景を題材とした写真や映像作品では、画中に写っていない(写っていないように見える)ものや間合いをこそ捉え、またドローイングではまだ見ぬ世界を絵筆の先から手繰り寄せるように、長年に渡り執拗に描き続けています。
前回2018年の展覧会ではドローイングを中心とした初の作品集の出版記念展として開催。四半世紀に及ぶ自身の制作を掘り下げ再認識する機会となりました。「Atlas」と題された今回の展示では、新作の映像とドローイング作品を中心としながらも、過去に制作された作品や映像の断片も等価に並置し、一方向的時間軸ではない、渾然一体とした稲垣の作品世界をご覧いただきます。
また今展での新たな試みとして、会期中稲垣本人が毎日会場で作品の制作や展示の入れ替えを流動的に行います。その様子を捉えた映像をショートムービーとして、ウェブ上で毎日公開予定。取り貯められた日々の映像は会期中を通して視聴可能。稲垣の行為の軌跡自体が今展での一つの要素となります。
様々な時間尺度を織り交ぜながら、さらにオンライン発信を有効に活用することで空間的な制限も乗り越えることを目指す今展は、幾層にも時代が積み重ねられた稲垣自身の世界地図の様であると同時に、世界中で見る人それぞれにつながる、始まりもなく終わりもない広大な地図となるでしょう。展覧会最終日には長年稲垣とのコラボレーションを続けている.es(ドットエス)による音楽ライブの開催を予定。 また、展覧会に先駆けてオンライン上で作品の先行販売も予定しています。
Nomart 公式HPより引用
今展での稲垣元則の様々な試みに是非ともご注目くださいますよう、よろしくお願いいたします。
[作家コメント]
Atlas アトラス
私はドローイングを続けることで、自分の成長と老いを観察しています。
私は何ができて、何ができないかを考えます。同じく何ができるようになって、何ができなくなったのかということも考えます。
20歳の頃のようなドローイングはできません。同じく20歳の私が今のようなドローイングをすることできないでしょう。人の生活や感情、それによる思考や思想の変化は必ずしも時間軸に沿っているわけではありません。昨日良いと思っていたものが今日悪いと思ったり、それがまた将来許せたりすることもよくあることです。進んだと思っていても後退していたり、停滞していると感じても全く違う場所に飛躍していたりします。それに影響されて私は成長し、また老いてゆきます。それは時間と寄り添いながらもまた別の事象であると考える場合があります。
ドローイングは信じることと疑うことを繰り返す為のフィールドになります。
ドローイングは歩くことで、考えることです。今回、私はiPhoneで映像を撮影しました。そこには軽く、固定されていない感覚があります。その感覚は継続されているコピー用紙によるドローイングに似ています。周りに余白を作って対象が動くようにするのです。それは先ほどの時間軸と自分の価値観や信じることがずれていることに対しての辻褄を合わせるためのものなのかもしれません。余白によって対象が動くようにしていれば、もし明日自分が別人のように変わってしまっても、また違う見方でこのドローイングの意味を見出せるかもしれません。言い換えればそれは自分と全く違う国や時代の誰かにも繋がってくれるのではないかという希望でもあります。
稲垣 元則 Motonori Inagaki
NOMART 公式HPより引用
会期中、作家本人が毎日ギャラリー1階の展示中央部で作品制作をしているようです。タイミングが悪く在廊されていませんでしたが、訪問前に在廊時間をノマルさんに確認してもいいかもしれません。
毎日、展示を追加したり制作している模様を撮影し、ショートムービーとしてYouTubeで公開しているようです。
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映像作品は1階に3つのプロジェクターと2階に液晶モニターで投影されています。
それぞれ投影サイズや投影している高さが違います。天井が高く白い展示空間が余白のように見えるので、モノクロで静かな映像に非常にマッチしています。
大きな展開がある映像ではありませんが、ずっと無心で観てられる心地よい映像作品でした。
特に、葉が散る映像は合成かと見間違うような美しさでした。
販売していれば欲しいと思ったのですが、今回は販売していませんでした。
今後、販売など検討していくようです。
ドローイングは稲垣さんらしい自由なドローイングです。
30年以上、B4サイズのコピー用紙へのドローイングを行なっており、その数は現在で1万点以上に及ぶようです。
稲垣さんの作品は単体で観るというよりは、全体(展示空間や時代)で捉えることで面白い作家さんだと思います。
2階に展示されている横長の写真作品「Atlas(walking)」は、iPhoneのパノラマ撮影モードで撮影した写真作品のようです。パノラマモードの指示を無視して動きながら撮影することで像がブレ、違和感のある写真作品となっていました。
ノマルらしい静かでクールな展示でした。
心地よい映像作品は必見です。
皆様ぜひ。
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稲垣元則と名和晃平の映像作品です。