詩人と美術家とピアニスト / Gallery Nomart
Gallery Nomartで開催されている、ギャラリー35周年企画の１つ
「詩人と美術家とピアニスト」を鑑賞してきました。
今回の展示のレセプションの2日後に、
代表の林聡さんが入院され、そのまま退院することなく2024年11月1日に逝去されました。
あまりにも突然の訃報で、言葉が出てこず、なかなか受け入れ難い状況ですが、
林さんが、関西、そして日本のアートシーンへ与えた影響は計り知れません。
林さん、本当にお疲れ様でした。
心よりご冥福をお祈りいたします。
この展示は林さんにとって最後の展示であり、最後にデザインした詩集の出版企画です。
長年、出版物のデザインはデザイナーに任せていたようですが、今回の詩集に関しては20年ぶりに、ご自身でデザインされたようです。
以下の画像はギャラリー会場の二階で流れている、レセプション時の映像の切り抜きです。
今回の展示は、日本を代表する美術評論家の建畠晢さんの詩をもとにしたグループ展です。
建畠晢さんは美術評論家である一方、文学界では詩人として高い評価を得ています（詩集が第35回高見順賞、第21回萩原朔太郎賞受賞）。
今回は、過去に建畠さんが発表してきた詩の中から17篇の詩をノマル代表の林さんが厳選し、それぞれの詩を17名の作家にお題として与える企画です。
17名の作家はGallery Nomart所属の作家で、名和晃平さん・植松 奎二さん・藤本 由紀夫さんのような大御所から、小谷くるみさん・山田千尋さん・黒宮菜菜さんのような新進気鋭の作家まで、様々な年代の表現の異なる17名の作家が選ばれています。
建畠さんの詩は、シンプルで読みやすい類の詩ではなく、独特の言い回しや複雑な表現が多く、建畠さんの世界観がぼんやりと、時には強烈に読者に響いてくる不思議な作品です。
解釈の仕方が、人によっても大きく違ってくる詩だと思うので、作家がどのように解釈して、どのように表現しようと思ったのか、作家の思考過程が見えてくるようで興味深い鑑賞体験でした。
その作家の代表的な手法で描いていないものも多く、特に小谷くるみさんの作品は、非常に挑戦的な作品で印象的でした。
- 「あい だ」 / 小谷くるみ
- ディティール
一方で、代表的な手法であえて表現している作家も多く、中川佳宣さんの作品は、詩の要素がどこかにないか探して考えるのがとても楽しかったです。
特に感じるものがあったのが名和晃平さんの作品です。
詩の内容と名和さんが選択したドローイングという手法が、林さんへのメッセージのように感じられてグッとくるものがありました。
- 「Phantom of the Grotto」 / 名和晃平
- ディティール
名和さんに与えられた詩は「透明な住民」というタイトルの詩です。
名和さんが若手時代に育ててもらったGallery Nomartで、当時よく発表していたドローイング作品の手法で、建畠さん、林さんの期待に応える。粋な作品だなと感じました。
そして、一つの空間に存在する透明な人々のやり取りを描いた内容の詩なのですが、登場する透明な人が、姿は見えなくても、今もギャラリー空間をあたたかく見守っているであろう林さんのように感じる作品でした。
実際には林さんがお亡くなりになる前に作られた作品なので、そういう意味はないと思いますが、林さんが今まで起こされてきた奇跡を考えると、それもあるのかなと。。
- 「畳屋の二階で、鳥が殺されました」 / 黒宮菜菜
- ディティール
詩を読んで作品をみる。
作品をみて詩を読む。
観る順番によっても作品や詩の印象が大きく異なる、不思議な鑑賞体験でした。
皆さんも是非ギャラリーで、詩を読んで、作品を観て、堪能してほしいと思います。
そして、詩集を購入して、家に帰ってからもう一度じっくりと読んでもらいたいと思います。
ギャラリーで見たものとは、また違う世界が見えてくるはずです。
ノマル35周年記念1 – 詩人と美術家とピアニスト
木村 秀樹, 植松 奎二, 片山 雅史, 中川 佳宣, 今村 源, 名和 晃平, 稲垣 元則, 田中 朝子, 藤本 由紀夫, 東影 智裕, 黒宮 菜菜, 飯川 雄大, 小谷 くるみ, 山田 千尋, 栗田 咲子, 高嶋 英男, 池上 恵一, 建畠 晢, sara (.es ドットエス)
2024.10.28(mon) – 2024.11.16(sat)
Gallery Nomart
13:00 – 19:00 日曜･祝日休廊
