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【アートレビュー】Photo Exhibition – ひと 栗棟美里 / 髙倉大輔 / ノモトヒロヒト

Photo Exhibition – ひと 栗棟美里 / 髙倉大輔 / ノモトヒロヒト

TEZUKAYAMA GALLERY にて、和田直祐さんの個展と同時開催されているグループ展「Photo Exhibition – ひと 栗棟美里 / 髙倉大輔 / ノモトヒロヒト」について紹介します。

同時開催の和田直祐さんの個展レビューはこちら!

今回の展示は、栗棟美里髙倉大輔ノモトヒロヒト の3名の作家と、ギャラリーコレクションの作品を展示したグループ展です。

この度、TEZUKAYAMA GALLERYでは写真展「ひと」を開催いたします。

写真はその歴史とともに常にその時代を写し続けてきました。その中でも人は常にその被写体であり続けてきました。写真家 たちは人の写真を撮ることで何を表現していたのか? 記録のための写真であるのか、それ以上の意味が含まれているのか。それはある意味で、その時々に作品と対峙する鑑賞者に委ねられているのではないかと考えます。本展では弊廊所属作家の3名の作品をコレクション作品と共に展示します。

1988年生まれの栗棟は昨年に行われた個展にてレンチキュラーレンズを用いた新シリーズを発表。同シリーズの作品で京都府新鋭選抜展・産経新聞社賞を受賞しています。美 ・存在・時間・生命をテーマに鋭い目線で作品と向き合う栗棟の過去作品を展示いたします。

高倉大輔は1980年生まれ。演劇、 写真、デザインというバックグラウンドを持つ高倉は、一人芝居をテーマにした”monodramatic”をシリーズとして発表しています。昨年には東京都渋谷区の開発地区の仮囲いにて行われている渋谷2丁目プロジェクトにて新作を発表。同じシリーズでも、時代とともに移り変わるその作品は鑑賞者にとって一人ずつ違う体験となるでしょう。

1971年生まれのノモトヒロヒトは昨年、写真新世紀にて佳作を受賞。過去には数々の国際写真展で入賞経験を持つ実力派が”ヤレ”と呼ばれる報道写真で採用されなかった写真というテーマのもと、報道写真の裏側を記録した作品を発表しました。本展で展示するシリーズ、”into the silent land”は、日常風景や人物を写しながらも異次元を思わせるような作品となります。ドキュメンタリー写真の視点を孕む作品には、鑑賞者にダイレクトに伝わるでしょう。

コレクションからは荒木経惟、クリストファーマコス、澤田知子、ナットフィルケンシュタイン、細江英公らの作品を展示予定。彼らの撮る”ひと”は栗棟、高倉、ノモトらの作品と並ぶ時、どのように鑑賞者の目に写るのでしょうか。和田直祐の初個展「Pathway」とともに、是非ご高覧くださいませ。

TEZUKAYAMA GALLERY Press releaseより引用 https://www.tezukayama-g.com/exhibition/photo-exhibition-hito

ノモトヒロヒト

名前は存じ上げていなかった作家さんですが、2011年の東日本大震災で津波に被災した建物を正面から捉えた作品「Facade」や、パチンコ屋を正面から捉えた「Facade2」の作品はSNSで拝見したことがありました。

今回展示されていた「into the silent land」シリーズは、日常の景色を撮影した作品ですが、構図であったり光の使い方が独特で、違う世界の景色に見える作品です。

自分たちの周りに存在する世界も、少し視点を変えることで違う世界が広がっている(自分たちが気付いていないだけ)ことを感じさせてくれる作品でとても面白かったです。

高倉大輔

4/2に放送されていた「LIFE〜夢のカタチ〜」の放送500回記念SPで特集されていた作家さん。

どの作品もモデルの方の表情が絶妙。様々なポーズや表情が、被写体一人一人の感情を上手く引き出していて、一つの物語が一枚の作品の中に集約されているように感じました。

やってることはシンプルなんですが、多分真似してもできない。こういう表情を切り取れないと思うし、単調になって、違和感が出てきてしまうと思います。

モデルとなる人との対話による徹底的なリサーチが、作品としての存在感を生み出しているように感じました。

 

栗棟美里

「 bandwagon effect 」でお世話になった栗棟さん。今回は代表的なレンチキュラーではない作品の展示でした。

レンチキュラー以外の作品は初めて拝見しましたが、作品のクオリテイーも高く、内包されたコンセプトもしっかりしていてとても良かったです。

この作品は、裸の女性にコンプレックスを持っている部分にファンデーションを塗っているようで、コンプレックスを持っている部分を隠すこと(隠そうとする)により、かえって目立ってしまっています。

ここからはあくまでもこの作品を観て私が感じたことですが、
この作品はビジュアル的なコンプレックスを題材にしていますが、人間の内面的な部分も同じで、弱さを隠すためにマウントをとったり、攻撃したりすることで、かえってその人の弱さが露見してしまっている状況をよく目にします。

そこが人間らしさでもあり、人間の弱さでもあるといえばそうなのですが、人間は完璧である必要はなく、弱さを見せることも大切なのではないかと私は思います。

何より、この写真を観ているとフェンデーションで隠さなくても美しいと思うんです。

自分が思っているコンプレックスや弱さって、意外と周りは気にしてないし、気づいてなかったりする。堂々としている方が楽だったりするのかなと思います。まぁ、なかなかそれが難しいのですが…

というようなことをこの作品を観て感じていました。

 

いい写真作品は、作品も目の前にすると沢山のことを気付かせてくれます。

今回の3人の作家さんは、それぞれ異なる様々な手法やビジュアルで表現されています。

それぞれの作家が、ストーリーやコンセプトをしっかりと内包しており、いろいろなことを感じ、考えさせてくれるとても良い展示でした。

時間を作ってゆっくりと鑑賞してみてはいかがでしょうか。

 

グループ展 ”ひと”

2021.3.25 [Fri] – 4.23 [Sat]

営業時間: 火 – 土 12 : 00 – 19 : 00

休廊日: 日曜日・月曜日・祝日

https://www.tezukayama-g.com/wp-content/uploads/2022/02/PR-Hito_2022_JP_s.pdf

 

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