東大の先生! 超わかりやすくビジネスに効くアートを教えてください!
今回は、三浦俊彦さんの「東大の先生! 超わかりやすくビジネスに効くアートを教えてください!」について紹介します。
著者の三浦さんは、東京大学文学部教授で美学・形而上学を専門とされており、芸術大学や美術大学の出身でもなければ、作家活動をされてきた方でもない、このような書籍には珍しい経歴の持ち主です。
三浦 俊彦
1959年生まれ。東京大学文学部美学芸術学専修課程卒業。
現在、東京大学文学部教授。専門は美学・形而上学。
大学で教えながら小説と哲学書を出版し、匿名でさまざまな芸術活動を行う。
美術、音楽、文学の純粋芸術から映画、アニメ、格闘技、パラフィリアに至るまで、「アート」に関係するすべてを愛し、哲学的な視点で考察してきた「アートの哲人」。
著書に『虚構世界の存在論』(勁草書房)『シンクロナイズド・』(岩波書店)、『論理パラドクス──論証力を磨く99問』(二見書房)、『論理学入門』(NHK出版)、『下半身の論理学』(青土社)、『エンドレスエイトの驚愕──ハルヒ@人間原理を考える』(春秋社)など。
昨今、アート思考を題材にした書籍はよく目にしますが、アートとは名ばかりで、内容は完全なビジネス書となっている書籍が多い印象です。
もちろんアート思考についての本ですので、読者のニーズを考えるとそのような内容で正解なのでしょうが、アートを愛するものからすると、もう少しアートのことを語ってほしいし、純粋なアートの面白さも伝えてほしいなと、いつも思ってしまいます。
この書籍、少し他のアート思考関連の書籍とは、いい意味で違った内容でしたので詳しく紹介していきたいと思います。
本書は以下の項目で構成されます。
- 1日目 いま流行りの「アート」って何?
- 2日目 美術だけじゃない!アートの種類と価値はいろいろある
- 3日目 【教養としてのアート】アート史は進化論で学ぶと超面白い!
- 4日目 【刺激剤としてのアート】現代アートの魅力を教えてください!
- 5日目 【人生の本番としてのアート・前編】アート鑑賞のすすめ
- 最終日 【人生の本番としてのアート・後編】全員がアーティストになる時代
主人公であるアート初心者の郷和貴という人に、三浦さんがアートについて指導していくという対話形式の内容です(マンツーマンの授業のような感じです)。
項目を見ていただけるとわかると思うのですが、THEアート思考的な内容は6章の最終日だけで、それ以外はアートのことを丁寧に解説している内容です。アート初心者の主人公に指導していく形式なので、初心者でもわかりやすく、ザックリではありますが、アートとは何か?アート鑑賞とは何か?について解説しています。
アートの内容についても現代アートが中心で、マルセル・デュシャンの泉についても、今まで読んだ初心者向けの本の中で一番わかりやすく解説されていましたし、全体的な流れも難しくなりすぎず、興味をそそるような内容・流れになっているように感じました。
全くアートに詳しくない私の職場の上司にもこの書籍を勧めたのですが、とても分かりやすかったと言われていました。
普段からアートの面白さを一方的に伝えて洗脳しようとしていたのですが、本書を読んで「美術館とかギャラリーに行ってみたい」と言われていたので、アート初心者の方に勧めるのにもとてもいい本かと思います(コレクターの方は配偶者の方とかにも…)。
いきなりガッツリとしたアート思考の本で勉強し初めてしまうと、アートの基本的な部分が抜け落ちてしまう可能性があるため、本書を導入にして、より詳しいアート思考の書籍を読んでいってもいいかもしれませんね。
また、私たちのようなアートコレクターやアートに興味を持っている層にも、もう一度、アートとは何か? アート鑑賞とは何か? と振り返ることができて、面白いのではないかと思います。
様々な人にお勧めできるいい書籍でした。宜しければ是非!