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【調べてみた】アートに使われる素材や技法を調べてみた〜銅版画編

アートに使われる素材や技法を調べてみた〜銅版画編

今回は、好評をいただいているシリーズ【調べてみた】シリーズです。

【調べてみた】まとめ

 

以前、記事で書きました小谷くるみさんの個展「砂から星へ」で、新たな挑戦として銅版画の新シリーズが展示されていました。

【アートレビュー】小谷くるみ個展「砂から星へ」

 

銅版画という技法はよく耳にするのですが、どういう技法なのかあまり理解できていなかったため、今回は版画技法の一つである銅版画について調べてみたいと思います。


銅版画の種類

銅版画は【直接法】と【間接法】に分かれます。

【直接法】

(直接銅版に工具を使って銅版を彫る技法)

①ドライポイント

②メゾチント

③エングレーヴィング

【間接法】

(腐蝕液を使って間接的に銅版を彫る技法)

④エッチング

⑤アクアチント


①ドライポイント

  • 1480年頃のドイツでつくられた作品が最古のものとされており、技法や道具への熟練をあまり必要としないために簡単に自由な線を描くことができるのが特徴です。
  • ポイントという金属の針で銅に彫っていきます。手の力で引っ掻くので、それほど深い溝ができないのですが、線の回りに金属のまくれができます。版にインクを詰めると、まくれの裏にもインクがたまり、このインクも紙に刷り取られるために滲みのある柔らかな線となって印刷されます。
  • まくれの大きさや形状は、描画材である針や刃の硬さ、描刻時の力の入れ加減や針が版に当たる角度などによって変化するために、様々な表情の線を作り出すことが可能です。
  • 版のまくれが摩滅しやすく、プレス機で印刷すると圧力によってつぶれてしまうため性質上、少量しか印刷することができません。このため試刷りはなるべく少なくし、鋼鉄やクロームで表面にメッキ加工を施すことで、50枚程度の印刷が可能になります。

②メゾチント

  • ドライポイントと同じく、銅のまくれを利用した技法で、ドライポイントから派生した技法と考えられています。
  • 「ベルソー」という工具や「ルーレット」を使って、銅版の表面に無数の傷を付けると、刷のときインクが拭き取れず真っ黒に刷れます。この傷(まくれ)を絵柄に合わせて削る事でインクが拭き取れるようになり、白く絵柄が浮き出てきます。

③エングレーヴィング

  • 最も古くから行われた銅版画技法で、15世紀ヨーロッパで武具や貴金属の装飾のために金属の表面を印刻する金細工職人の技術から生まれ、彼らが装飾の絵柄を記録するために印刻によってできた凹部にインクをつめてプレス機で印刷したことが始まりだと考えられています。
  • ビュランという道具で直接銅版に彫刻して線や点を彫って製版します。力の入れ加減で深く彫ったり浅い微細な線を彫ることもできます。印刷された描線はドライポイントのようなまくれによるにじみもなく、エッチングのような腐食によるくずれもない、冷たくクリアな印象になります。また、描線の始まりと終わりが鋭く細くなり、線の中になるほど太くなります。
  • 細かい描写を行う場合には、熟練の技術を必要とします。そして印刷された画像は偽造が難しいために、現在では紙幣や証券の印刷などにこの技術が生かされています。

④エッチング

  • エッチングは凹版画において、金属版を腐蝕させて製版する間接凹版技法(蝕刻法)のひとつで、凹版の基本技法として最もよく知られており、銅版画の代名詞のように語られることもあります。
  • 銅の表面に「グランド」という防蝕膜を塗ります。その防蝕膜を鉄筆でひっかくと、グランドがはがれ、線の部分だけ銅の表面が露出します。この版を、「塩化第二鉄」といった、銅に対して腐蝕作用のある薬品の中に入れることで、線の部分だけ腐食され、凹部が刻まれます。この凹部にインクを詰め、紙をのせてプレス機で圧を加えることで、インクが凹部から紙に転写されイメージとして印刷されます。
  • エッチングは、ドライポイントのように「まくれ」はできませんが、より深く彫られるので、シャープな線が得られる特徴があります。

⑤アクアチント

  • 凹版画において、金属版を腐蝕させて製版する腐蝕技法(間接凹版技法)のひとつで、フランス人のジャン・バティスト・ルプランスが始めた技法です。
  • 版面に松脂やアスファルトの粉末を撒いて加熱定着、腐蝕させることで多孔質な版面を作り出します。こうしてできた版は、エッチングでできる線の表現とは違い、面で水彩画のような濃淡の調子を表現することができます。
  • 薄墨を筆で塗ったような調子が得られますが、単独で使っているケースは少なく、たいていは「エッチング&アクアチント」という形で併用している作品が多い傾向です。

<引用サイト>

http://zokeifile.musabi.ac.jp

http://www.joshibi.net/hanga/curriculum/intaglio/intaglio.html

https://n-hanga.com/douhan/hanga/etching01.html#

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