「新型コロナはアートをどう変えるか」
今回は、サラリーマンコレクターとして有名な宮津大輔さんの書籍を紹介します。
宮津大輔さんは、1963年東京都生まれ。広告代理店や上場企業の広報などを経て、現在、横浜芸術大学学長と森美術館理事としてご活躍されています。サラリーマン時代から収集している素晴らしいコレクションや、アーティストと共同で建設した自宅が非常に有名な、日本を代表するコレクターです。
現代アートに関わる人やコレクターならば、必ず読むべき書籍を多数執筆されている宮津さんですが、本書は、現在世界で猛威を奮っているCOVID-19とアートの関係性について詳しく解説されており、非常に勉強になる内容ばかりでしたので紹介させて頂きます。
本書は以下の4章で構成されています。
- 芸術は疫病をどう描いてきたのか
- 新型コロナとアート市場
- アートは死なず
- ウィズ/ポスト・コロナ時代のアート作品
芸術は疫病をどう描いてきたのか
この章は、主に歴史や社会情勢の解説で、宮津さんって何者?!と思わせてくれるくらい、かなりマニアックな内容でした(少し難しい…)。人間と疫病の戦いの歴史を中心に、その時にどのような芸術が生まれたのか、どのような芸術が求められたのか、かなりのページ数を割いて紹介されています。
新型コロナとアート市場
この章は、宮津さんの書籍でよく登場するアート市場に関しての解説です。過去の書籍も読み込んでいたため、知っている情報も多かったのですが、ここ7年くらいのアート市場のハイライトと共に、コロナ禍の状況を踏まえたアートフェアの現状や、米中貿易戦争がアート界に与えた影響など、最新の情報も交えた内容がとてもわかりやすかったです。
アートは死なず
本書のメインはこの章かと思います。私自身、肌で感じ、ボヤッとしていた知識が、この章を読むことでかなり整理されました。特に下記の文言、痺れましたね。
単なるトレンドに迎合しただけの作品は、長い目で見れば、いずれ評価されやくなるばかりか、結局は美術館での展示や収蔵とは無縁の”なんちゃって現代風アート”として消えてしまうことでしょう。
「新型コロナはアートをどう変えるか」宮津大輔 光文社新書 p.105 より引用
現代風アートか…笑
ウィズ/ポスト・コロナ時代のアート作品
「人新生」や「ポスト人間中心主義時代」「脱化石燃料時代」など、現代社会においてホットなワードが多数登場するので、この本は何の本だったかな?と一瞬戸惑いますが、アートとそう繋がるのかと色々な発見がありました。
私自身もコロナ時代を境に、求められるアート作品の方向性が大きく変わっていくのではないかと感じています。コロナが今まで見過ごされてきた様々な問題を炙り出したことにより、一旦社会がリセットされ、従来よりも社会情勢を反映した作品の重要度が増してきたり、新たなテクノロジーを汲み取った作品がより出現してくるのではないかと思っています。
本書をきっかけに、私たちの世界の現在・未来のこと、そして、そこに関わる様々なアートについて深く考えることができました。
素晴らしい書籍でしたので、皆さま是非お読み下さい。