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【アートレビュー】からっぽに満たされる Fill with Empty 高嶋英男個展 / Gallery Nomart

からっぽに満たされる Fill with Empty

Gallery Nomart ギャラリーノマルで開催されている、高嶋 英男さんの個展
「からっぽに満たされる Fill with Empty」を鑑賞してきました。

高嶋 英男とは?

1981年東京生まれ。
多摩美術大学→大学院を経て、2014年に東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了された作家さんです。
近年は、関東を中心とした多数のグループ展への出展や、京都場での「ソンザイノリンカクヲツクル」や、銀座蔦屋書店の「うつわのようにたたずむ」などの個展の開催など、関東・関西で活躍されています。2011年には、第14回岡本太郎現代芸術大賞展に入選されています。

展示について

この度ノマルでは、東京生まれの現代美術家、高嶋英男の個展を初開催いたします。 多摩美術大学大学院と東京藝術大学大学院で日本画、工芸、彫刻を学んだ高嶋は、陶や彫刻などで日常にある何気ないもののイメージを拡大、反転させながら作品化している作家です。府中市美術館での公開制作や、岡本太郎現代芸術大賞展での入賞など日本での活躍に加えて、ソウル、台北、高雄、パリ、ブリュッセルなどでも作品が展示されており、国内外から注目を集めています。 高嶋の代表作とも言える「からっぽに満たされる」シリーズは、顔部分に壺の口のような大きな穴がぽっかりと開いている人や動物の陶作品です。陶芸のうつわの外側の形と、内側の空洞が同時に存在することに興味を抱いたことから生まれた作品で、鑑賞者は何もない「からっぽ」からその像の本質について想像を働かせることになります。 ノマルと高嶋の関係は、2023年京都場(京都市)での個展の作品に感銘を受けたノマルの元ディレクター林聡が声を掛けたことから始まりました。今展に先立ち、林の誘いで35周年記念企画として開催した2回の記念展で発表を重ね、待望のノマル初個展となります。 今展では、大きく存在感のあるものから小作品、光を発する作品やドローイングなど、様々なスケールと種類の作品を展示。それぞれが互いに干渉し、共鳴するインスタレーション空間を作り上げます。関西での個展は希少となりますので、ぜひとも会場で多様な「からっぽ」たちと対話ください。高嶋のノマルデビュー展にどうぞご期待ください。
「からっぽに満たされる」という作品は、人や動物など生物の顔の部分を花瓶や壺などの陶器の口の部分に置き換えた肖像のシリーズです。ひとつひとつの作品は焼き物の土を使い、手びねりで中を空洞にしながら制作をしています。顔には穴が空いており、その表情は見えませんが佇まいや仕草などから一点一点の存在の輪郭を感じ取ることが出来ます。 「からっぽに満たされる」という言葉は何もないということではなく、多様な可能性を内包する余白に満ちている状態だと言い替えることが出来ます。顔という特徴を表す部分があえて「からっぽ」になることで地と図が反転し、イメージが広がるきっかけが生まれます。 「美術」と「工芸」、「有」と「無」など色々な物事の境界線を行き来しながらその狭間に生まれる存在を捉え、思考や感情の「うつわ」になるようなものを作りたいと思う自分がいます。 高嶋英男

鑑賞記録

高嶋さんの作品はグループ展やアートフェア等でよく小作品を拝見していましたが、工芸として成り立つレベルの高いクオリティと、彩色の色味や器や壺の形を残した姿から、現代アートの文脈ではなく、工芸から波及した作品という印象で捉えていました。

Gallery Nomartでの初個展ということで、その辺りの雰囲気はGallery Nomartとマッチするのかなと思っていましたが、完全に杞憂でした。というよりも、高嶋さんの評価を完全に見誤っていました。

空間の作り方として、大小の作品を並べるというだけではなく、大量の陶器の破片を波紋のように大きな立体作品の周辺に配置して、一つのストーリーを作り上げていること。そして、アフターコロナ時代を意識した立体作品の存在や、絶妙な配置でそれぞれの作品が共鳴する様子、展示タイトルをみると、しっかりと現代アートの文脈で戦っている作家さんであると感じました。

 

今回は立体作品だけではなく、Gallery Nomartの林さんの提案で作られたドローイングが同じ空間に展示されることで、よりその部分が強調されており流石だなと感じました。

ドローイングもただのドローイングではなく、マスキングテープを用いて画面上に空間を作ることで、立体作品をただただ平面に落とし込んだだけではない、独自の存在感を放っており、インパクトの強い立体作品にも負けていませんでした。元々は日本画を学んでいたようですが、平面作品を作る機会はかなり久しぶりのようですが、どれも高嶋さんの魅力をうまく引き出している作品だと感じました。

 

とても小さい小作品も多いので(といっても結構売り切れていましたが…)、自宅でも飾りやすい作品が多く、立体作品を初めてコレクションする人にもおすすめです。あのサイズですとミュージアムジェルなどを使えば安全に展示できるかと思います。

可愛らしい作品も多く、とても見応えのある展示でした。
万人にお勧めできる素晴らしい展示でした。

Gallery Nomart
「「からっぽに満たされる Fill with Empty」」
2025.1.11 sat – 2.8 sat
13:00 – 19:00 日曜・祝日休廊
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