新型コロナウイルスの影響で様々な展示やイベントが中止となっていますが、
現在、上野の森美術館で開催中の「VOCA展2020−新しい平面の作家たち−」の広報事務局さんより作品の画像データをいくつか頂けましたので、この記事では出展される作品をいくつか紹介したいと思います。
「VOCA賞」Nerhol
サカナクションのアルバムのアートワークを制作したことで、近年はアートファン以外からも注目を浴びているNerhol。重ねた写真を近年のNerholらしい、うねる様な荒々しい彫りにより内面をえぐり出した作品。一見、拷問されているような写真に見えるが、宇宙飛行士の重力を除去する実験の写真とのこと。モノクロ・うねる様な彫り・モチーフのそれぞれが、様々な葛藤や不穏な空気を醸し出している。
「VOCA奨励賞」菅 美花
初めて知った作家さん。実在する自分と自分の頭部を型取りした人形とのダブルポートレートの写真で、画像データからはどちらが実在する人間なのかわからない。横にはセルフィーの加工画像をiPadに映したものを並べており、SNSなどのバーチャルの世界で、人間が簡単に加工・コピーされていく現代社会の一種の違和感のようなものをこの作品から感じる。
「VOCA奨励賞」李 晶玉
3331アートフェアなどで目にして気になっていた作家さん。Olympia 2020というタイトルから国立国際競技場を連想させるが、「ベルリンオリンピック会場」「ベルリンオリンピックのマラソン日本代表、ソン・ギジョンの体操服」「日章旗抹消事件で消された太陽」など、様々な批判を東京オリンピックにぶつけている作品。それだけの重いテーマを、一見あっさりとした感じに表現しているのが本当に素晴らしい。
「VOCA佳作賞」黒宮 菜菜
私自身もコレクションしており、大変注目している作家。かなり多層的で、写真では伝わりにくいが非常に手の込んだ描き方をしている。是非近づいたり横から作品を見て欲しい。黒宮さん得意の独特の妖しい雰囲気が滲み出ており、観るものの想像を掻き立てる作品。
「VOCA佳作賞」宮本 華子
映像と写真、刺繍を組み合わせた作品。うまく行っていなかった父との関係性をモチーフに作品を生み出している作家。本人の公式HPなどを拝見していると、この人にとって作品を作るということは、制作というよりは、父との思い出を再構築する一種の行為なのではないかと感じる。
「大原美術館賞」浅野 友理子
力強さを持ちながら、絵本の世界の様な軽やかな雰囲気も感じる。他の作家とは少々雰囲気が異なるが、生命の営みを画面からも感じることができる。
他にも、増田将大・城愛音・藤城嘘・小林健太など、私が注目している作家さんが多数出店されています。
何かと大変な時期ですが、お近くの方は是非。