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【アートレビュー】コレコレ展 vol.4 Osaka<作品紹介(有田推薦作家)>

現在、大阪のTEZUKAYAMA GALLERYで開催中のコレコレ展ですが、コロナ禍により来阪することが難しい方に向けて、展示風景と作品を紹介いたします。

吉田さん推薦作家の作品紹介はこちら

今回は、推薦コレクターの1人 有田啓さんのコレクション作品と推薦作家の展示・販売作品を紹介していきます。会場に掲示されている有田さんのコメントも記載しておりますので併せてどうぞ。

コレクション作品

亜鶴

Night Walker
2019
Mixed media
530x455mm

2019年11月、帝国ホテル内のMEDEL GALLERY SHUで開催された個展で発表された作品です。とあるキュレーション企画の内のひとつだったため、通常の展示予定よりも早く告知されていた記憶があります。当時まだコレクションを始めて間もなかった私は、その告知にあった作品を見て衝撃を受けました。画像からでも伝わる圧。これは必ず見に行かねばということで優先的に予定を組んで伺い、サイズ・予算が許す中からこの「Night Walker」を購入しました。彼の作品の中では異端の部類に入るかもしれませんが、孤独・寂しさを強く感じさせる作品です。私にとっては、某ミュージシャンの名曲の歌詞を想起させる作品でもあります。

有田 啓 コレクションエピソード

豊田 涼華

untitled
2019
Oil,charcoal and oil bar
910x727mm

2020年2月、東京のWAITINGROOMで開催されたグループ展『まなざしのカタチ』のDMに採用された作品です。彼女自身コマーシャルギャラリーでの展示は初めてで、情報もほとんどなく、あまり注目していなかったというのが正直なところなのですが、たまたま正面からじゃない角度で撮られた画像をSNSで見かけたときにハッとして、即ギャラリーに問い合わせ、翌日には購入していました。未だにどこに惹かれたのかうまく説明できないのですが、お気に入りの作品です。なお、当時転職したてで余裕がなかったため、生で見たことがない作家の作品をそのまま購入するという邪道なことをした作品でもあります。(後日伺って他の作品も色々と見せてもらいました)

有田 啓 コレクションエピソード

出展作品

亜鶴

1991年生まれ。兵庫県出身、大阪府在住。 実在しない人物のポートレートを描くことで他者の存在を承認すると同時に、自己の存在へと思慮を巡らせるというテーマで制作活動を行っている作家です。刺青施術スペースを運営するタトゥーアーティストでもあります。個人的な話になってしまいますが、私が作品を購入するときの判断材料のひとつに、ヒリヒリするようなシリアスさを感じるかというのがあります。亜鶴さんの作品は、本音は隠しているように思えるながらも、極めて情緒的かつシリアスな感情を纏っているように見えてしまう自分がいて、抗いがたい魅力を感じています。多くの人が一生の中で経験するであろう、でも胸に秘めたままの言葉にならない気持ちを表現してくれている作家だと思います。

有田 啓 推薦文

美術的なアーティストでありながらタトゥーアーティストとしても活躍しており、タトゥーの彫り師になるために絵筆を取ったという珍しい作家さんです。

コレクターさんからの人気も高く、よくSNSで作品を拝見していましたが、今回生で初めて拝見しました。いい作家さんですね。小さい絵なんですが、パワーが凄い。このサイズでこの圧ですから、大きい作品だったらどれくらいの圧があるのか見てみたくなりました。関東の某コレクターにいつか見せてもらおう..笑
タイトルからモチーフを連想するのも面白いですね。


豊田 涼華

2019年 京都造形芸術大学油画コース卒業、東京藝術大学大学院 美術研究科 絵画専攻在学中。 豊田さんはまだ学生ですが、昨年東京のWAITINGROOMで開催されたグループ展でコマーシャルギャラリーデビューを果たしています。実際に現地に赴いて写真に収めたものやWEBから拾った画像など、自分の目に映った人々の姿を描いているとのことですが、目には映らない何かの気配を感じてしまうような、独特の空気感を纏う作風に惹かれ、そのとき出品されていた作品を購入させてもらいました。まだ対外的な露出が少ないため、作品に触れる機会は多くはありませんが、修了展と重なる大変な時期に、また、コロナ禍で一時期は制作もままならなかったにも関わらず参加してくれたことに感謝するとともに、今回の展示が少しでも彼女のキャリアのプラスになればと願っています。

有田 啓 推薦文

学生ながらWAITING ROOMで取り扱われており、非常にコレクターの間でも非常に注目されている作家さんです。

正直言うと、実は白い作品を狙っていました。笑

コレコレ展の推薦者は会期中買えないルールなので、会期終了後まで残っていたら絶対買おうと思っていたのですが、私の目の前で売れていきました…笑

そらそうか…笑


井田大介

1987年鳥取県生まれ。TEZUKAYAMA GALLERY(大阪)所属。 貧富の格差や過度な生産性重視といった現代社会の事象を解体・再構築し、社会システムの歪みやジレンマをテーマとした彫刻や映像作品を制作している作家です。井田さんは、そのコンセプトからか樹脂や3Dプリンター、ARなど現代の産業で使われる比較的新しい素材や技術を用いることが多い印象で、自分の仕事柄それらに少し馴染みがあったので興味を持ちました。私のような美術史に明るくない人間からすると、正直なところ理解するのが難しい作風なのですが、過去から学び、今という時代を生きているからこそできる象徴的な作品の数々が、遠い未来でどのように評価されるのか、長い時間軸で見ていきたいと思える作家です。

有田 啓 推薦文

3年くらい前に作品が欲しくて、井田さんにDM送ったことがあります。予算の加減でその時は見送りましたが、その時よりさらにクオリティが上がっている印象です。

Victorious Youthがモチーフの新しいシリーズの作品は、綺麗に仕上げられていないところが不完全さを醸し出しており、3Dプリントで作られていることの違和感が、とても面白い作品です。代表的なシリーズになり得るのではないでしょうか。


岡田 佑里奈

兵庫県出身、2020年京都造形芸術大学修士課程修了。 岡田さんは、人物や風景のモノクロ写真をクラック(ひび割れ)させた独自の作品を制作しています。The Art of Color DIOR 2019に入選するなど評価の高かった写真作品に、レイヤーを追加して新たな表現に挑戦するという積極的な姿勢が素晴らしく、実際それらの作品が卒展で多くの人々の目に留まり、その後の活躍につながったようです。元は複製可能な写真でありながら、クラックの処理が難しく、エディション作品でありながらひとつとして同じものはないというところにもコレクター心がくすぐられます。昨年さまざまな場所で作品を見かけた彼女ですが、いい意味で周囲の環境に溶け込みやすい作品を作るので、アート作品を購入したことがない、家に飾ったことがないという方の最初の1品としてもオススメしたい作家です。

有田 啓 推薦文

大人気のアーティストで、今回も非常に問い合わせが多かったようです。
唯一無二な制作方法・作品のクオリティは写真を用いて制作する若手作家では頭一つも二つも飛び抜けているでしょう。

ひび割れの様な質感が本当にカッコいいですね。今回販売されているDream in outシリーズ、金色のペインティングが入るだけでだいぶ印象変わりますね。いいですよ。

もともと油画をされていた作家さんなので、これからどういう風に作品が進化していくのかとても楽しみですね。いつかコレクションしたいと思っています。


出口 雄樹

1986年生まれ。福岡県出身、京都府在住。 出口さんは、ストリート・日本画など多彩なバックグラウンドを持ち、東洋の絵画と西洋のポップアートのエッセンスの融合を独自のスタイルで表現する作家です。もしかすると、以前星野源のepのジャケットを手掛けたことでご存知の方もいるかもしれません。モチーフなどに彼が育ってきた町や触れてきた日本の歴史・伝統を意図的に取り入れた上で、そこにとどまらず、過去と現在、アジアと欧米などとの文化的なつながりを模索していく真摯な姿勢が、ひと目で彼の作品だとわかる個性を作品に与えています。一昨年までNYを拠点に活動していたため、日本での展示の機会はまだ少ないですが、今年は国内で複数の個展のほか、どうなるかはわかりませんが海外の美術館での展示も予定されているようです。個人的には、近年台頭している新しい日本画表現の可能性を広げていく作家のひとり、というよりもそういったジャンルの壁を飛び越えていく存在だと思っています。海外の市場で揉まれた、完成度の高い作品に注目です。

有田 啓 推薦文

「Subliminal Switch」に関して

サブリミナル(subliminal)とは、心理学の用語で「識閾(しきいき)下の、潜在意識の」 という意味の形容詞です。識閾とは刺激によって感覚や反応が起こる境界、もしくは無意識から意識へ、また、意識から無意識へと移る境目をいう語です。同じイメージを繰り返すこの作品は、イメージを繰り返し見る時に無意識下に刷り込まれる記憶の効果を狙っています。このようにイメージを繰り返すの手法は、デザイナーからアー ティストになったアンディ・ウォーホルも使用しています。

また、「生」は「死」を意識した時により輝きます。作品の中に漫画に使用される吹き出しを入れ込み、死を連想させるドクロをコミカライズすることで、イメージをポップに伝えるようにしています。ワシントンポストのアートレヴューでは「出口は、象徴的なコマーシャルアートから形態を、漫画からは吹き出しを作品に取り入れている。 優雅で伝統的な作品を経て、彼の作品は未来に悠揚たる衝撃を与える。」と評されました。

作品内の彼らが語るのは古今東西の格言や諺、時にはたんなるWord(言葉・単語)です。 人々が先人の言に耳を傾けて入れば、世の中はもっと良くなったもしれませんが、 そうならないのも、私たちの世界の面白さなのかもしれません。これは、そういったアイロニーを軽快に織り交ぜた作品です。深層意識を刺激するサブリミナルなスイッ チをテーマとしたのが、このシリーズ:Subliminal Switchです。

作家本人の解説

先日のアートコレクターズの完売作家特集で紹介されていた作家さんです。

始めて生で拝見しましたが、とてつもないクオリティで正直驚きました。日本画のクオリティの高さと、ストリートのPOP感が融合した感じは、あまり他で見たことがなくとても新鮮でした。

作品に対してのコンセプトもしっかりしているので、これから国内外で人気が出てきそうですね。今回も一番大きな作品が売り切れたので、コレクター でも注目している人は多そうですね。私も注目してみていきたいと思います。

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