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【アーティストインタビュー】#010 茂苅希美

【アーティストインタビュー】茂苅希美

  • 1992年 京都府生まれ。
  • 2015年 京都市立芸術大学 美術学部美術学科 油画専攻 卒業
  • 2017年 京都市立芸術大学 大学院修士課程 絵画専攻(油画)修了

2017年の「京都市立芸術大学作品展」での奨励賞の受賞や、2017年に京都市美術館で開催された「京展」で京展賞、市展・京展80年記念賞を受賞し、京都市美術館に作品がコレクションされるなど期待の若手作家。


 
運営者 播磨
オープンスタジオで偶然話しかけた作家さんです。一見、抽象的な絵に見えますが、コラージュによるモチーフを作成し、それを元に下絵を描いていくという描き方をされています。制作していく中で生じる実感や記憶の変化というアンコントロールなものをあえて受け入れて(取り入れて)キャンバスに表出していく制作過程が非常に面白いと感じ、今回インタビューをお願いしました。

 
自己紹介をお願いします。
茂苅希美です。京都府出身で2017年度に京都市立芸術大学油画専攻修士課程を卒業し、現在はGURAという京都の共同スタジオに所属しながら制作をしています。
 
作風やコンセプトを教えて下さい。
 自分でコントロールできない物事について畏怖や憧憬があり、例えば身近な現象だと時間の経過による実感の乖離、記憶の風化だったりするものですが、それらに対しての抵抗を試みることや、その軌跡を残すということを考えながら作品を制作しています。
 
現在制作されている作品について教えてください。
現在は、自分が体験した出来事について、だんだんと記憶と実感がばらばらに離れていくような、「自分のことだけど他人事」みたいな感覚を起点に制作しています。

記憶は色々な形で生成されると思うんですけど、実感って意外とすぐなくなるなと思っていて。

その事実の曖昧さみたいなところに気づいて「本当に自分に起きたことなのか?」っていうようなことを問いかけながら、過去のスナップ写真をコラージュしてエスキースとなるものをつくり、絵画に描き起こしています。

その自分の線がまた過去の線になっていくというところから、過去の軌跡でもあるその線と対話して修正したり訂正したりというイメージで、絵作りの落とし所を探っているというようなプロセスです。
 
自分の優れているところを教えてください
大体のことをなんとなく、できている風に見せることがうまいと思います。(笑)

こんな風にやったらできるのかな、もしくはできているように見えるのかなという、勘はよく働くと自分で思っていてできない、ってなった時に一歩引いて自分を客観視したり、アイデアが出せたり、そういった課題の解決方法はそれなりに多く心得てるんじゃないかなと思います。
 
苦手なことはなんですか?
苦手なことは喋ること、言葉で説明することです。めちゃくちゃ考えながら言葉を探すので、喋るのも遅いです。自分の作品について言葉にすることも、未だにジレンマを感じます。それを乗り越えることも一つ、自分の作品を周知するための手立てだと思っているんですけど、ストレートな単語や表現で説明できないと、これって間違ってるんじゃないかなとネガティブになってしまうことも多いです。
 
影響を受けたアーティストを教えてください
学生時代の経験は大きくて、自分の制作を大きく変えるきっかけをもらった方がいます。迷った時の状況の打破の仕方みたいなものをとにかく沢山教えていただきました。また、ステートメントであったり、課題や解決の方法、根拠の作り方などについて言語での表現を指導して頂き、現在も制作において重要なことだと実感しています。自分では非常に苦手でどうしても避けてしまう所なので、それが大事だと考えられたことは自分にとって大きな出来事です。

あとは、オキーフがすごく好きで、その生き様みたいなものに憧れを抱いていた時もありました。ただ、作風などに影響したというよりは、共鳴していたという感じでした。
 
子供の頃はどんな子供でしたか?
めちゃくちゃ人見知りをする子供でした。保育園のとき仲のいい友達がいて、そんな仲のいい子でも休みの日にたまたま会ったりするとうまくしゃべれなかったり、公園に行ってその子がいるともう行くのが嫌になっちゃって、帰りたいって言って親をかなり心配させてたみたいです。
 
アート以外で好きなことはなんですか?
音楽を聴きに行くことと、あとは料理とか。音楽は熱狂する対象でもあるんですけど、 知らない曲を何も考えずに聞いたりするのも好きです。料理も作ってるときの無心な状態というか、潜在的な意識の中で集中する、みたいな時間ができ、自分にとってはそれがリラックスできる状態なのかなと感じます。
 
思い出に残っている作品やプロジェクトを教えてください。
大学修士の在学時に制作した、今のシリーズの最初のような作品です。

自分がコントロール出来ない、他のものの力を感じて抵抗を試みるということが制作プロセスの元になりました。具体的には、150号のキャンバスを2点用意し、その2面で転写をするという内容です。片方に絵の具を乗せて転写して開くというデカルコマニー的な手法だったんですが、 転写してできた謎の面が、これは自分の作品と言えるのか?みたいな問いかけから、自分の作品と認知できる存在にするにはどうすべきなのかを考え、これを元に完全に模写をしていくという作業をしました。意図的に描いたものが転写によって得体の知れないものになり、それをまた自分のものにしていく作業は、結構禁欲的というかしんどかったです。

でも、そのしんどい中で「私は本当はこう描きたい」という欲も気持ちとして出てきたりしました。模写の中でも自分の情とか気持ちで描いてしまう部分があるので、完全の無意識で模写していくことは勿論不可能で。そういった、何か自分の絵画への欲を試してみようという興味と、不可能に抵抗する自分の軌跡みたいなものを残したいなというところがきっかけで作品を制作して、それが今の作品にも繋がっています。
 
夢を教えてください。
現在、自分が将来こうなりたいという姿がいくつもあって、その中で迷いを感じてる所なんですが…。何かやり遂げたいですね。現在販促関連の仕事をしているのですが、仕事もちゃんと勉強して追いかけたいです。その上で、絵はいつでも付いてきてくれると思うので、いつまでも好きな時に描けるような、そんな人生を送れたらと思います。
 
Courtesy of Nozomi Mogari
 
Courtesy of Nozomi Mogari
 
Courtesy of Nozomi Mogari
 
http://syuumatunoart.com/2019/10/30/【アーティストインタビューまとめ】/

 

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